刑法の傷害罪と暴行罪の関係
傷害罪の「傷害」の意義をめぐっては、暴行概念との限界をめぐって見解が次の3つに分かれている。(a)人の生理的機能に障害を与えることが傷害とする見解(生理的機能障害説)、(b)人の身体の安全性を害することとみる見解(完全性毀損説)、(c)人の生理的機能に障害を与えることおよび身体の外貌に重要な変化を加えることと解する見解(折衷説)である。判例は、おおむね、(a)の見解にしたがうものといえる。
刑法課題「傷害罪と暴行罪の関係」
傷害罪の「傷害」の意義をめぐっては、暴行概念との限界をめぐって見解が次の3つに分かれている。(a)人の生理的機能に障害を与えることが傷害とする見解(生理的機能障害説)、(b)人の身体の安全性を害することとみる見解(完全性毀損説)、(c)人の生理的機能に障害を与えることおよび身体の外貌に重要な変化を加えることと解する見解(折衷説)である。判例は、おおむね、(a)の見解にしたがうものといえる。
例えば、女性の頭髪を根元から剃刀で切り落とす行為は、有形力の不法な行使であるが、生理的機能の障害をもたらすものではないから、a説によれば、暴行罪(208条)が成立するにとどまるが(大判明45.6.20)、身体の安全性を害し、また身体の外観に著しい変更を加えるものであるから、b説、c説によれば、傷害罪が成立することになる。
傷害の概念を明らかにする実際的意義は暴行との区別にあるのであるから、その点からすれば、傷害と暴行概念との質的差異を重視し、「傷害」という言葉のもつ日常用語的意味を考慮して、傷害の意義を健康状態の不良の変更に限定して捉えるa説の...