精神障害者のノーマライゼーション
この30年間に,わが国の障害者福祉の考え方は大きく変化している。
その背景には,北欧諸国で知的障害者施設の処遇のあり方,とくに人権侵害に対する厳しい批判に端を発し,欧米各国でも障害者福祉の共通の理念として定着をみたノーマライゼーションの理念が強く反映しているといえよう。
ノーマライゼーションの理念は,障害者の人権,価値,尊厳性は他の市民と同じであり,障害をもつ者も障害をもたない者も平等に生活できる社会こそノーマルな社会である,そのための生活支援システムを構築する運動であるという点である。
わが国の精神障害者に対する施策のなかで,ノーマライゼーションという言葉が使われたのは,1991(平成3)年,公衆衛生審議会の「地域精神保健対策に関する中間意見」において,「地域における精神障害者のケアと住民の心の健康づくりは,住民と精神障害者とが地域において共に生活を送るという考え方(ノーマライゼーション)に立って相互に関連を保ちつつ実施される必要がある」と記されたのがはじめてである。
その後,1994(平成6)年には同審議会の「当面の精神保健対策について(意見...