動的システム論のアドバンスドレポートです。
いくつかある指定図書からの選択となりますが、「新しい自然学―非線形科学の可能性」のレポートとなります。
「動的システム論 アドバンスドレポート
新しい自然学―非線形科学の可能性」
物理学科の出身であった私は、蔵本先生のことをよく知っている。振動子同士の
引き込み現象などの業績のほかに、非線形力学系の研究で有名で、どちらかという
と「物」を対象としない「システム」の研究でよく知られていた。本文でも記述さ
れているように、非線形力学系は新しい分野である。しかしながら、非線形力学系
自体は、物理学の分野の中では万有引力という形でニュートンによって初期から扱
われている。物理学とほぼ同時に、生まれ在ったわけである。
従来の理論物理学はほとんど例外なく「孤立系」の記述をしてきた。閉鎖系では
外部とのエネルギーのやりとりがなく、それゆえ比較的単純な微分方程式によって
その振る舞いを記述することができる。しかし、現実の現象に目を向ければ、その
ような完全な「孤立系」を探す方が困難である。むしろ、存在したところで、外部
とエネルギーをやり取りしないことは観測できないことを言っている。もちろん、
現実の力学系のほとんどは外部に開かれており、それゆえ複雑で予測困難なパター
ンを生じさせる。このような複雑な力...