「全可」の科目の参考資料です。
科目修得試験
持ち込み「全可」答案例・参考用
平成24年度
第1回
科目名:貨幣経済論
科目コード:0747
問題
次の2つの問題に答えなさい。
(1) 直接金融と間接金融の違いを説明しなさい。
(2) 貨幣の定義に関して,貨幣職能学説について説明しなさい。
ここから
(1)
企業の資金調達のうち,外部資金は資金余剰部門(主に家計)から資金不足部門(主に
企業)への資金の融通という形をとるが,その融通は直接金融と間接金融に分けることが
できる。
直接金融とは,資金の最終的借手である企業が株式や社債などの証券を発行し,それら
を投資家としての最終的貸手である家計が購入することで資金が企業に融通されることで
ある。
最終的借手としての企業が発行する株式や社債を『本源的証券』というが,直接金融は
最終的貸手である家計が直接にこの本源的証券を取得する取引であるといえる。直接金融
の場合には,通常,証券会社が貸手と借手の間に立って本源的証券の売買を仲介する。最
終的貸手が発行する本源的証券としては,国債,地方債,政府保証債(公社,公団が発行)
,
株式,社債,借入証書などがある。
間接金融とは,最終的貸手と最終的借手の間に銀行などの金融機関が介在する場合をい
う。家計が銀行に預金し,それを銀行から企業が借りるケース。その場合には,家計は預
金証書を銀行から受け取る。家計の預金は銀行にとって負債であり,銀行が発行するこの
預金証書を『間接的証券』という。一方,資金の借手である企業は銀行に対して借入証書
を渡たすが,この借入証書は直接金融の場合と同じ本源的証券である。
したがって,間接金融とは最終的借手が金融仲介機関に本源的証券を渡し,金融仲介機
関が最終的貸手に間接証券を渡す取引である。間接金融においては,貸手と借手の間に立
つ金融仲介機関が本源的証券を間接的証券に転換するという『資産変換機能』を果たして
いることに注意する必要がある。
(2)
イギリスの経済学者 J.R.ヒックスは,
「貨幣はその機能によって定義される」
。
「貨幣として
使われるものは何であれ貨幣である。換言すれば,
『貨幣とは貨幣として機能するものであ
る』
(Money is what money does)」
,と述べている。これは,貨幣の素材については一切問
わず,「貨幣として流通しているモノ」が貨幣であるという考え方である。これが,『貨幣
職能学説』と呼ばれているものである。この学説によれば,紙切れであれ,ニッケルであ
れ,国民がそれらを貨幣として認め,それらを他の財と交換し流通させているならば,そ
れが貨幣となるのである。
以上
ここまで
参考文献など
・阿達哲雄・佐々木邦明著
『企業金融の話』東洋経済新報社,1984 年
・中谷厳著『入門マクロ経済学
第 5 版』日本評論社,2007 年
・原司郎編『テキストブック金融論』有斐閣,1980 年
・j.ヒックス[1967]著,江沢太一・鬼木甫訳『貨幣の理論』東洋経済新報社,1978 年,邦訳
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