「道徳教育の意義について述べよ。」
まず、道徳とは、いかなるものであるかを理解するために、欧米の思想の源流であるソクラテスとプラトンの思想を考察する。ソクラテスはイデア論を提唱した。すなわち、人々がめいめいの経験の範囲だけに閉じこもっていれば、全体としての進歩も発達もなく、原始の状態にとどまる。経験から科学や技術が生まれるためには、いままでに経験されたものから、まだ経験されていないものへの飛躍が必要であり、その飛躍を可能にするものは、推理であるとした。そして、推理を可能にするものとして、既知のものと未来のものを一括する普遍的なものの媒体、つまりイデアが必要であるとした。この考えは、ソクラテスの弟子であるプラトンへ引き継がれていく。プラトンは、「真実を見ることのできる人々」を育成するために、全人的な調和のとれた人間への教育が必要であるとした。このような考え方は、近代的教育思想の源流をなしている。
道徳とは、大辞林では「ある社会で、人々がそれによって善悪正邪を判断し、正しく行為するための規範の総体。法律とは違い外的強制力としてではなく、個々人の内面的原理として働くものをいい、また宗教と異な...