今日のバイオエシックス

閲覧数2,693
ダウンロード数11
履歴確認

    • ページ数 : 3ページ
    • 会員550円 | 非会員660円

    資料紹介

    今日のバイオエシックス
    はじめに
    「バイオエシックス」という言葉はあまり聞きなれない言葉である。これはギリシャ語に由来するもので、「医療技術や遺伝子工学の発達で起こってくる倫理的な問題を考察する学問」と定義され、訳語としては「生命倫理」が用いられることが多い。脳死と臓器移植、インフォームド・コンセント、安楽死などの様々な生命倫理の問題がある。その中でも特に脳死問題と臓器移植について考えていこうと思う。
    人の死とは
     従来から死の三兆項は心拍停止、呼吸停止、瞳孔散大であった。しかし、近代科学の進歩によって、脳の機能停止の後も人工的に呼吸を多少維持できるようになってから、特に臓器移植の問題とのかかわりで、死の再定義をめぐる議論が活発になった。脳死によって自発呼吸停止等の生命現象の停止を招き、人工呼吸器等の生命維持装置の助けを借りなければ、数分内に酸素不足による心拍停止が起こり、他臓器の不全を次々ともたらしていく。しかし生命維持装置を使用すれば、呼吸や心拍等の生命兆候を数週間保持できるとされ、ここに深刻な問題が生じてきたのである。主な脳死概念には、全脳死説、脳幹死説、大脳死説がある。
    全能死説は、呼吸、循環等の生命現象をつかさどる脳幹を含む全脳機能の不可逆的停止をもって脳死と定めようという立場である。世界の脳死説の多数はこれを採用しており、有名な判定基準にはハーバート基準や米国大統領委員会基準等があげられる。日本の厚生省基準もこの立場を採用している。
    脳幹死説は、脳の内部の呼吸等、生命現象の統合能力が集中する脳幹部の機能の不可逆的停止が証明されれば、全脳機能の不可逆的停止の証明を待たずに、脳死を宣告しようという立場である。主に英国で採用されている。
    大脳死説は、脳幹が生きていても、意識(認識)や感情をつかさどる高位中枢が死ねば、それだけで脳死を宣言するに値するという立場で、先鋭的な脳死説であるが、最近米国を中心にこの仮説に共鳴する倫理学者たちも出始めている。高次脳の機能が停止しても、脳幹が生きているいわゆる植物状態患者は、これまで脳死者とは区別されてきた。しかし、大脳死説が社会に受容されたら、この区別は意味をなさなくなる。さらに、高次脳が欠損しているいわゆる無脳児も死者とされることになる。このように自発呼吸をしている者が死者とされかねなくなれば、重大な事態を招くことになろう。しかし、公的にこの基準を採用している国や機関はこれまでのところ存在しない。
     もともと死は過程であり、線引きが困難であるとしたら、死の定義はいずれにしてもきわめて価値判断に近い概念になるのではないだろうか。
    臓器移植の倫理性
     心臓死体からの場合
    心肺停止による死者からの移植に関しては、これまで宗教界を始めとして、各界から大きな異論は出されてこなかった。中でもキリスト教は明確にこれを肯定し、死後における隣人愛の実践であると推奨してきたのである。けれども、この問題については、各文化や宗教の遺体観の相違が微妙な差異としてあらわれている。
     脳死体からの場合
    この場合の倫理問題は、脳死を人の死として容認できるか否かが中心である。もしも人の死であれば、もともと死者からの移植には異論がなかったのだから、ほとんど問題は生じない。しかし脳死を人の死と認めるかどうかは前述のとおり、難しいのである。
     生者からの場合
    生体腎移植の倫理性関して明確な議論が存在したのは、主としてカトリックの倫理学の内部においてであった。ここで、最大の倫理問題は、健康なドナーにメスを入れ、危険性を負わせることの倫理的な適

    資料の原本内容 ( この資料を購入すると、テキストデータがみえます。 )

    今日のバイオエシックス
    はじめに
    「バイオエシックス」という言葉はあまり聞きなれない言葉である。これはギリシャ語に由来するもので、「医療技術や遺伝子工学の発達で起こってくる倫理的な問題を考察する学問」と定義され、訳語としては「生命倫理」が用いられることが多い。脳死と臓器移植、インフォームド・コンセント、安楽死などの様々な生命倫理の問題がある。その中でも特に脳死問題と臓器移植について考えていこうと思う。
    人の死とは
     従来から死の三兆項は心拍停止、呼吸停止、瞳孔散大であった。しかし、近代科学の進歩によって、脳の機能停止の後も人工的に呼吸を多少維持できるようになってから、特に臓器移植の問題とのかかわりで、死の再定義をめぐる議論が活発になった。脳死によって自発呼吸停止等の生命現象の停止を招き、人工呼吸器等の生命維持装置の助けを借りなければ、数分内に酸素不足による心拍停止が起こり、他臓器の不全を次々ともたらしていく。しかし生命維持装置を使用すれば、呼吸や心拍等の生命兆候を数週間保持できるとされ、ここに深刻な問題が生じてきたのである。主な脳死概念には、全脳死説、脳幹死説、大脳死説がある。
    全能死...

    コメント0件

    コメント追加

    コメントを書込むには会員登録するか、すでに会員の方はログインしてください。