私は今回の課題のテーマに「神様のボート」(江國香織著、新潮文庫)を取り上げる。既婚の身でありながら、「骨ごと溶けるような恋」をし、25歳で娘の草子を身ごもった葉子は、「葉子が何処にいても必ず見つけ出す」と言って去っていった、葉子の恋人であり、草子の父である「あの人」を求め、引越しを繰り返す。安息の地を得ることを頑なに拒む葉子、そんな母に最初は着いて行った草子だが、大人になるにつれてすれ違いが生まれていく。恋愛の静かな狂気に囚われた母葉子と、その傍らで成長していく娘草子の遙かな旅の物語である。
そもそもプロットとは何なのだろうか。文学の新教室によると、ストーリーとプロットは対比されるものだという。ストーリーとは、
筋であり、筋書きや筋立てと呼ばれるもので。
言い換えれば、出来事であり、事態の変化である。それに対し、プロットとは因果関係である。「どうして」「どうしてそうなるの」といった、好奇心に応えて、虚構の世界を内部から支える法則だ。プロットの内容を決定するのは、葛藤であり、葛藤とはいわゆる対立である。つまり、プロットとは脈絡のあるつながり、つながりの原理を指し示す。
このつながり...