人間の言語に共通する特徴のうち、恣意性・生産性について説明する。
田中春美『言語学のすすめ』のなかで、言語について以下のように述べている。
言語は記号の一種であるとよく言われる。それが正しいかどうか判定するためには、記号というものの性質を明らかにしなくてはならない。その目的のためには、記号とそうでないものとを区別する外側からの定義と、記号に含まれるさまざまな変種を明らかにする内側の定義とがどちらも必要になる。そこでまず、「記号」とそれによく似た「象徴」の異同について考えてみることにしよう。
二つの対象―これには、生物・無生物・抽象概念・その他ありとあらゆるものが入るーが結び付けられる際に、いろいろな結びつきの様式が考えられるが、大きく分けて、両者が原因・結果のような因果関係で必然的に結ばれる場合と、何らかの目的で両者が偶然に結ばれる場合とがある。前者の例としては、入道雲と夕立、桜の花と春の到来、くしゃみと当人の健康状態のようなものが挙げられ、後者の例としては、海上での信号として使われる旗とその伝達内容、交通信号と道路標識とそれを示す警告、そして、発音や文字の組み合わせか...