2004年、様々な雇用問題の中で取り上げられることが最も多かったのは女子新卒者の就職苦や、終身雇用・年功賃金など日本型雇用形態の崩壊ではなく、フリーター増加による危惧ではなかっただろうか。フリーターはいまや400万人に及び、その職業訓練の困難や、社会保障などの待遇面、フリーター経験者の正社員化の困難などのフリーター自身の問題や、日本経済への悪影響が危惧されてきた。しかしもはやフリーターは、多様化した雇用形態の一つであり、フリーター事情に即して職業訓練や社会保障制度を再考すればよいとの考え方もみられる。それよりも、まだあまり知られてはいないのだろうが、深刻な問題が起こっている。それが、ニートの増加である。ニートとは、学校を卒業した後、フリーターのようなアルバイトすらもせず、専門学校等で職業訓練も行わずにいる状態の人を指し、そのような人々が若者を中心に増加している。この現象が日本経済に及ぼす影響は、フリーターのそれよりも深刻であることは明白であろう。しかしそれよりも問題なのは、ニートが増えているという現象そのものである。何故若者は働かないのか、働かない若者は今後も増えていくのか、その増加が我々の生活にどのような影響を及ぼすのか、この現象の課題はまだ問われ始めたばかりであり、我々はその一つ一つをしっかりと見定める必要があるだろう。
・「ニート」概念の整理
ニートとは元々はイギリスの内閣府が作成した“Bridging the Gap”という調査報告書によって広く知られるようになった言葉であり、Not in Education,Employment or Trainingの略語である。つまり教育機関にも籍を置かず、就職もせず、職業訓練も受けていないという意味で、労働力調査でいえば「非労働力」の一部であり、俗語で表せば「プータロー」や「家事手伝い」がそれに相当するかもしれない。
若年者における就業意識の変化
~「ニート化」される若者たち~
<目次>
・はじめに
・「ニート」概念の整理
・ニートに向けられる視線
・労働市場の引き起こすニート化
・事例研究
・おわりに
・はじめに
2004年、様々な雇用問題の中で取り上げられることが最も多かったのは女子新卒者の就職苦や、終身雇用・年功賃金など日本型雇用形態の崩壊ではなく、フリーター増加による危惧ではなかっただろうか。フリーターはいまや400万人に及び、その職業訓練の困難や、社会保障などの待遇面、フリーター経験者の正社員化の困難などのフリーター自身の問題や、日本経済への悪影響が危惧されてきた。しかしもはやフリーターは、多様化した雇用形態の一つであり、フリーター事情に即して職業訓練や社会保障制度を再考すればよいとの考え方もみられる。それよりも、まだあまり知られてはいないのだろうが、深刻な問題が起こっている。それが、ニートの増加である。ニートとは、学校を卒業した後、フリーターのようなアルバイトすらもせず、専門学校等で職業訓練も行わずにいる状態の人を指し、そのような人々が若者を中心に増加している。この現象が日本経済に及ぼ...