『事例で学ぶ民法演習』の解答です。本書は、北海道大学の教授陣による民法の演習書です。本書は、家族法を除く財産法の全てを網羅しており、旧司法試験や予備試験レベルの中文事例問題で構成されています。
事例問題形式での民法演習書として本書の問題は完成度が高く、基本論点を総浚いするとともに、判例に則した見解で記述がなされており、現時点で、民法科目最高の問題集であります。
充実した解答のついていない本書において、本解答は貴重なものであると思います。特に,答案を書くにあたり,受験生が苦手とする「事実の評価部分」が充実していますので、司法試験対策には非常に有用な内容に仕上がっております。
そして、本解答は司法試験合格者に添削をしてもらった上で作成しているため、信頼できる内容になっていると考えます。 また、発展的な問題については、参考文献や参考資料を引用した上で作成もしておりますので、学習の便宜上、有意義な内容となっております。
事例で学ぶ民法演習8
第一.小問1について
1.(1)Dは、Aの代理人と称するBから、A所有の乙山林を買い受けている。もっとも、本件では、BはAから交付された甲山林に関する白紙委任状の事項欄に、Aの承諾を得ないまま「乙山林売却の件」と記載・改竄し、これをDに示して本件乙山林の売買を行ったという事情がある。
そこで、DはAに対して、売買契約に基づき乙山林の引き渡しを適法に請求することができるか。以下、考えうる法律構成を示し、この当否に関して順に検討する。
(2)有権代理構成(民法(以下、特記無き限り省略。)99条)
ア.99条は、「代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接にその効力を生ずる。」とする。
イ.そこで、Dは、①BがDに乙山林を売却したこと、②①の際、BはAのためにすることを示したこと(顕名)、③①に先立ち、AがBに対して、乙山林売却のための代理権を授与したこと(先立つ代理権授与)(99条)、を主張してBの行った売買契約の効果はAに帰属することを主張することが考えられる。
ウ.もっとも、本件では、AはBに対して、甲山林を売却...