『事例で学ぶ民法演習』の解答です。本書は、北海道大学の教授陣による民法の演習書です。本書は、家族法を除く財産法の全てを網羅しており、旧司法試験や予備試験レベルの中文事例問題で構成されています。
事例問題形式での民法演習書として本書の問題は完成度が高く、基本論点を総浚いするとともに、判例に則した見解で記述がなされており、現時点で、民法科目最高の問題集であります。
充実した解答のついていない本書において、本解答は貴重なものであると思います。特に,答案を書くにあたり,受験生が苦手とする「事実の評価部分」が充実していますので、司法試験対策には非常に有用な内容に仕上がっております。
そして、本解答は司法試験合格者に添削をしてもらった上で作成しているため、信頼できる内容になっていると考えます。 また、発展的な問題については、参考文献や参考資料を引用した上で作成もしておりますので、学習の便宜上、有意義な内容となっております。
事例で学ぶ民法演習33
第一.小問1
1.AはB書店で書籍を購入したが、これに落丁があった。そこで、AとしてはBに対していかなる主張をすることができるか。以下、順に検討する。
2.完全履行請求
(1)まず、本件書籍は作家Cの新書であり、代替性が有り、不特定物である。そこで、Aとしては、Bに対して落丁のない作家Cの書籍を引き渡すよう完全履行請求することができる。
(2)また、Bが任意に上記債務を履行しない場合は、AはBが右債務を履行するよう、裁判所に対して強制履行を請求することができる(民法(以下、特記無き限り省略する。)414条1項)。
3.瑕疵担保責任について
(1)次に、Aは新書に落丁という瑕疵があると主張して、Bに対して瑕疵担保責任(570条、566条1項)を主張して、売買契約の解除、損害賠償請求をすることができるか。不特定物に瑕疵担保責任(570条)が適用されるかが明文なく問題になる。
(2)この点、特定物売買の場合には、目的物に瑕疵があってもその物を引渡せばたりる(483条、493条参照)ところ、570条は、有償契約の等価的均衡を保つため、特定物売買にお...