佛教大学M6115「日本文学概論」の第2設題レポートです。A判定合格済みです。レポートを書かれる際の助けになりますように。
芥川龍之介の『鼻』を読み
出典と比較して論ぜよ
芥川龍之介の「鼻」は1916年に文芸雑誌『新思潮』の創刊号に掲載された物語である。前年の1914年に「羅生門」を『帝国文学』に発表しており、芥川龍之介にとって意欲作であったこの作品が不評であったため、彼は自信を失いかけていたのだった。そんな中、この「鼻」で、夏目漱石から手紙で激賞され、これをきっかけに、芥川龍之介は小説家として生きていく決心が固まったと言われている。夏目漱石からの手紙には「大変面白いと思ひます。落着(おちつき)があつて巫山戯(ふざけ)てゐなくつて自然其儘(しぜんそのまま)の可笑味(おかしみ)がおつとりと出てゐる所に上品な趣があります」(朝日新聞2010)と書かれてある。
芥川龍之介は王朝物と呼ばれる平安時代を舞台にした多くの作品を『今昔物語』を典拠として書いており、「鼻」の典拠は『今昔物語』の巻二十八の「池尾禅珍内供鼻語」と『宇治拾遺物語』の「鼻長き僧の事」を参考にして書かれていると言われている。まず、あらすじから見ていくことにする。坂井(2010)による「鼻」(大正5年)のあらすじは下記の通りだ。
禅智内供という偉い...