近年のアメリカ労働市場の変化とその要因についてジル・A・フレイザーの「窒息するオフィス」(岩波書店)を参考にこれから論をすすめていきたい。
まず、私たちが一般に抱いているアメリカの労働環境は、日本の働き蜂的なイメージとは正反対で、週休2日や長期休暇をエンジョイし、月曜から金曜でも午後5時にはオフィスを離れゆったり家庭生活を送っているといったものであろう。しかし、本書ではそういったイメージというのがもはや幻想でしかないということをはっきりと示す内容が描かれている。
例えば、アメリカのホワイトカラーの異常なまでの長時間労働の考察を見てみよう。本書に出てくるある調査によれば全労働者の12%にあたる約1500万人が週に49時間から59時間をオフィスで過ごしている。さらに、全労働者の8,8%にあたる1100万人が週60時間以上働いているとのことである。さらには、休暇は減少する一方で、休日出勤や在宅残業が増え、従来型の長期の休暇旅行は著しく減って、短い週末旅行が主流になっている。それさえしだいに難しくなり、近くのホテルや温泉に泊まっての日本型の1泊旅行が増えているとのことである。では長時間労働に見合う報酬が得られたのかと言えばそうではない。給与自体はほとんど上がっていないか、もしくは下がっているのである。本書では、97年のホワイトカラー男性の一時間あたりの平均給与は73年のそれと比べて(インフレを考慮)わずか6セントしか上昇していないといったデータが紹介されている。また、97年米企業は過去40年間のうちで最高の利潤率を達成したが労働分配率は低下していた。労働省の調査によれば、18歳から29歳までの未婚者の収入は25年間に11%減、減少分の8割がここ10年で生じたというデータもある。ちなみに大企業の社長の収入は490%増加したともある。
アメリカ労働市場の変化とその要因について
近年のアメリカ労働市場の変化とその要因についてジル・A・フレイザーの「窒息するオフィス」(岩波書店)を参考にこれから論をすすめていきたい。
まず、私たちが一般に抱いているアメリカの労働環境は、日本の働き蜂的なイメージとは正反対で、週休2日や長期休暇をエンジョイし、月曜から金曜でも午後5時にはオフィスを離れゆったり家庭生活を送っているといったものであろう。しかし、本書ではそういったイメージというのがもはや幻想でしかないということをはっきりと示す内容が描かれている。
例えば、アメリカのホワイトカラーの異常なまでの長時間労働の考察を見てみよう。本書に出てくるある調査によれば全労働者の12%にあたる約1500万人が週に49時間から59時間をオフィスで過ごしている。さらに、全労働者の8,8%にあたる1100万人が週60時間以上働いているとのことである。さらには、休暇は減少する一方で、休日出勤や在宅残業が増え、従来型の長期の休暇旅行は著しく減って、短い週末旅行が主流になっている。それさえしだいに難しくなり、近くのホテルや温泉に泊まっての日本型の1泊旅行が増...