上代、古代、中世、近世の文学の特質を、それぞれの時代の特性をふまえつつ、下記の諸作品を例にして具体的に説明せよ。
〈古事記・万葉集・古今集・女流日記(女性によって書かれた日記)・源氏物語・平家物語・徒然草・近世小説〉
上代の文学とは、口承文学の誕生から平安遷都(七九四)までに成立した文学作品を指す。古墳時代に神話や歌謡が発生し、人々は祭りの場でそれらを用いて神への感謝などを表した。五世紀ごろ、漢字が隋から伝来し、文学の形が変化した。万葉仮名などの出現により、神話や歌謡も文字として記録されていくようになった。神話は散文化し、歌謡は定型化していった。この時期に誕生した代表的な作品に『古事記』と『万葉集』がある。
『古事記』は和銅5(七一二)年に成立した現存する最古の書物である。朝廷や天皇の歴史を記した書物が焼失したことにより、帝紀及び旧辞に虚実の混交を正そうとした元明天皇の勅命により、太安万侶が編纂した。天皇制のもとでの国家統一を正当化する一面が見られ、史記というよりも、文学作品としての価値が高く評価されている。表記は全て漢字だが、序文は純粋な漢文体、本文は漢字の音訓を交えた変則の漢...