明治、大正、昭和の文学の特質を、それぞれの時代の特性をふまえつつ、下記の各文学思潮を例にして具体的に説明せよ。
〈写実主義・擬古典主義・浪漫主義・自然主義・余裕派(高踏派)・耽美派・白樺派・新思潮派・プロレタリア文学・モダニズムの文学〉
明治維新以後、「近代文学」が誕生するまでは、戯作と政治小説があり、明治10年代には翻訳小説も生まれた。この頃の文学を啓蒙文学と呼ぶこともある。
日本の近代文学が成立するようになったのは、坪内逍遥の『小説神髄』と二葉亭四迷の『浮雲』の写実主義の主張からである。写実主義とはリアリズムの訳で、現実を尊重し、ありのままに描写しようとする創作方法である。のちの自然主義も、方法としては写実主義である。
逍遥は『小説神髄』の中で、小説の本質が「人情世態」を写実的に描き出すところにあると主張し、小説を芸術の一つとして明確に位置づけ、その後の日本文学の方向を決定づけた。これは日本で最初の小説論で、同時代や後世に大きな影響を与えた。この逍遥の主張を達成したのが二葉亭の『浮雲』である。『浮雲』は登場人物の心理描写を試みたリアリズム小説であり、言文一致体で書かれた日本近代文学...