2020年度、中央大学法学部通信教育課程 哲学 第4課題です。C評価でした。
1.ヘレニズムという時代
ヘレニズムとは、アレクサンドロス大王の死に始まり、アレクティウムの戦いで、オクタヴィアヌスがアントニウムを破ったときをもって終わる。この時代、ギリシア本土の諸ポリスは抗争に明け暮れ、文化的にも衰微し、人々はギリシア人共同体の意識を失っていった。虐殺と奴隷化が蔓延し、貧困者が増大し、少数の富裕大地主の出現に対し、莫大な数の奴隷が発生し、失業者はギリシア世界を放浪する武装集団になった。これが、古典ギリシアのポリス社会の崩壊の末路である。社会と歴史が悪化していたこの時代、もはや社会正義による社会の再建は望むべくもなかった。都市国家という故郷を失ったギリシア人の哲学は、厳しい現実に対処しつつ、個人の救済を図るものへと大きく変貌した。
ヘレニズムを代表するのは、ストア派、エピクロス派、アカデメイア派の3つである。
2.ストア派
ストア派はゼノンによって創始された。キュニコス派を源流とし、学問を倫理学、自然学、論理学と区分したことで知られる。ストア派にとって、あらゆる価値の源泉は自然であり、幸福とは「自然に従って生きる」ということである。ストア派では、宇宙にはロゴスが貫か...