日本国憲法は「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」(二十
五条一項)と規定し、当該規定は生存権に関するものと解されている。そこで、その法的
性格につき「朝日訴訟」、「堀木訴訟」及び学説を元に検討する。以下、判例における原告
を X、被告を Yとする。
「朝日訴訟」では、Xは肺結核患者として療養所に入所し、月六百円の日用品費の生活扶助
と給食付医療扶助とを受けていた。しかし実兄より毎月千五百円の送金を受けるようにな
ったため、市は生活扶助を打ちきり、上記金額から日用品費を控除した残額九百円を医療
費の一部として Xに負担させるよう保護変更決定をした。これを受け、Xは Yに不服申し立
てを行ったが、これが是認されるに至ったため、東京地裁に Y が下した不服申立却下裁決
の取消しを求める裁決取消請求訴訟を提起した。
第一審ではYによる保護基準の設定は羈束裁量行為であるとし、Xの主張を認容した。また、
本件保護変更決定は違法であるとして、Yの不服申立却下裁決を取り消した。
第二審では、Yによる保護基準の設定は羈束裁量行為ではあるが、月六百円の基準金額は低
額では..