被害者の承諾とは、法益主体である被害者が自己の法益を放棄し、その傷害に承諾又は同意を与えることである。被害者の承諾が構成要件該当性の正否に与える影響については以下の通りにわけられる。
1.構成要件該当性を阻却する場合。消極的構成要件該当性を否定すし、その行為が被害者の意志に反する違反行為(強姦[177条前段]、集団強姦[178条の2])になる。被害者の承諾がその構成要件該当性を失わせる場合は、「被害者の承諾のないことが明示的または黙示的に構成要件の内容とされている罪」(住居侵入罪[130条]、窃盗罪[235条]など)と解釈される。
2.違法性減軽事由となる場合。被害者の承諾が構成要件要素とする犯罪類型として法定されており、被害者の承諾がない場合(殺人罪[199条]、不同意堕胎罪[215条1項]など)と比べ、被害者の承諾がある場合(承諾殺人罪[202条]、同意堕胎罪[213条]など)よりも違法性を軽減させる効果が認められる。
3.構成要件上、承諾が意味を有しない場合。被害者が13歳未満の者への強制わいせつ[176条後段]、強姦[177条後段]などは、承諾能力がないものとみなし、たとえ事実...