本リポートは『論理学、別名思考の技法』「第四部」を読み解き、理性と信仰
との関係においての理性の役割を明らかにするものである。アルノーとニコルは
「理性と信仰は同じ一つの泉から湧いたもの」と言うが、そう言えるのは何故な
のだろうか。
まず最初にキーワードとなるのが学的知識である。学的知識とは、確実な真の
論拠が生み出す知識である。そうした論拠は「より長い時間をかけたより正しい
意志の傾注と、より堅実な確信と、そしてより生き生きとしており、さらによく
行きとどいた明証性とによって識別される」(p435)から真と言えるのである。こ
の学的知識の存在を否認する哲学者もいたが、著者はアウグスティヌスの言葉を
用いてそれを反論する。つまり、私は狂気でないかとか、外界の事物の不確かさ
に疑念を抱くとしても、考える私が存在するというのは確かであるのだから、私
が正気であろうと狂気であろうと生きていることは確実である、というものだ。
これは明晰で確実で疑いえない知識である。それなら存在と生命とを思考から切
り離すことは不可能なのだから、学的知識はやはり存在すると言えるのである。
ところで学的知識に...