垂直統合

閲覧数4,410
ダウンロード数20
履歴確認

    • ページ数 : 3ページ
    • 全体公開

    資料の原本内容

    垂直統合とは、製品を市場に供給するために必要な業務や生産工程の段階を社内に取り込んで、企業活動の範囲を拡張することです。企業は生産や販売へと自社のコントロールの範囲を広げることで、様々な競争の手段を持つことができます。また、生産や販売との一体化によって、経営効率を上げることができます。
    垂直的統合のメリットとデメリット
    メリット・・・規模の経済性をクリアできれば、研究開発・生産・販売・管理などの諸機能の共同化によるコストの削減、顧客ニーズに関する情報メリット
    デメリット…参入コスト(設備コスト)
    管理費の増加
    取引相手を変えないことによる競争地位の低下
    社内取引になることで競争感覚・業績感覚が麻痺する
    トヨタが行う垂直的統合
    自動車会社は様々な原材料や部品を加工・組み立てをして自動車を造る段階を担います。しかし、上流にはシートやタイヤ・ヘッドランプやカーステレオなどの部品を生産、供給する段階があります。下流にはディーラーという販売会社があり、メンテナンスサービスのための修理会社もあります。日本の自動車会社の場合、これらの諸段階はそれぞれ産業として独立している。これら一連のどの段階を事業領域にするかということは非常に大きな意味を持ちます。事業領域によって産業としての独自性が異なり、その会社の業績を大きく左右します。このように、部品メーカーは、研究・開発・生産のすべてのプロセスで組立メーカーとの垂直的分業生産体制に組み込まれ、積極的な技術戦略を展開しています。。
    これまではカード事業、中古車ビジネス、カー用品販売、自動車整備補修といった下流部分においては相対的に小さな存在感でした。しかし、ここ数年、トヨタが垂直的統合を強く志向しています。例えば、トヨタは“トヨタカード”を提携発行から自前発行に切り替えて自由に情報を管理できる体制に変えました。“ジェームス”のように、トヨタブランドをあえて隠したカー用品販売チェーンの展開を始めした。買い取り専門店“T-up”や大規模中古車販売店“カーロッツ”のように、独立した中古車ビジネスを立ち上げた。整備補修サービスでは、他社ブランド車の車検サービス獲得にも目を向け始めました。これらはすべて”垂直的”展開の具体的な表れといえます。中核事業において十分な競争力があるか否かが、垂直的統合の成功と失敗を分ける基本的要因となります。つまり、主戦場で力の弱い企業が垂直方向に事業を拡大したとしても、成功確率は低いということです。トヨタにおける中核価値は、商品とブランドです。トヨタが生産し販売する個々のモデルが消費者のニーズに合致した魅力的な商品でなければ、早晩トヨタのバリューチェーンは衰退してしまう。また自動車の購買選択は社会的かつ文化的な影響を強く受けるので、単に機能や性能だけで選ばれる商品ではありません。よって、消費者は社会的価値をも内包したブランドという“価値のシンボル”に購買決定を左右されることになります。
    新日本製鉄が行う垂直的統合
    インドのミタル・スチールがルクセンブルクのアルセロールを買収してから1年。新日本製鉄は、資本参加と技術提供からなる垂直的統合を加速しています。新日鉄は、世界的な再編機運の中で、着実に独自戦略を進めています。
    昨年後半には韓国の大手鉄鋼メーカーであるポスコ、そしてブラジル鉄鋼最大手で、日本とブラジルの合弁事業として1962年設立したウジミナスとの資本提携を相次いで実施しています。
    鉄鋼世界最大手のミタル・スチールは、提携関係の継続で2006年7月16日に基本合意した。新日鉄は、ミタルが事実上買収したアルセロールと自動車用鋼板の製造技術などについて包括提携している。ただ、アルセロールの経営権が他社に移った場合、新日鉄側が提携関係を無効にできる条項が盛り込まれ、今後の提携関係がどうなるかが注目されていた。この合意で、アルセロールが生産する高級鋼板の日系自動車メーカーへの供給などは維持される見通しです。
    一連の垂直的統合により、自動車用鋼板で垂直関係にある中国最大手、宝工集団参加の上場企業である宝山鋼鉄を含めて、韓国、ブラジルへと、守りの盾はさらに広がりました。
    新日鉄は傘下に収めたウジミナスを通じて新高炉の建設を計画しているとされる。時期は2010年、投資額は3000億円規模になる、との見方が強まっています。ブラジルには世界の自動車メーカー各社が進出し、高級鋼板をはじめとする鉄鋼需要が急増している注目の市場となっています。
    新高炉が完成すれば、粗鋼生産量は1110万トン規模まで拡大します。これまで進めてきた溶融亜鉛メッキ鋼板などの高級鋼材へのシフトを、戦後初となる海外新高炉の建設という形でいっそう加速することが可能になります。
    足元の好業績が、こうした攻めの姿勢を後押しします。

    コメント0件

    コメント追加

    コメントを書込むには会員登録するか、すでに会員の方はログインしてください。