今回、ロマン派詩人P.J.シェリーの『西風の賦(Ode to the West Wind)』とジョン・キーツの『ナイチンゲールに寄せる歌(Ode on a Nightingale)』を比較したい。いずれも抒情詩で1819年に作られた詩である。シェリーの『西の賦』は、四季を通した西風に、キーツの『ナイチンゲールに寄せる歌』は夏に歌うナイチンゲールに思いを託し、それぞれの感情や思想を叙情的に表現している。
詩の作られた背景であるが、『西風の賦』は、シェリーがイタリアの古都フィレンツェに滞在していた時にフィレンツェを流れるアルノ河の傍を歩いていて突然吹いてきた強烈な西風をもとに歌った詩である。次に、キーツの『ナイチンゲールに寄せる歌』だが、これはキーツがロンドンの北、ウエントワース邸に移り住んだ翌年に作ったものである。この時、キーツは自宅近くのファニーという娘と恋をしていたが、決して幸せに満ち溢れていたわけではなく、母や弟を奪った肺結核の病魔がキーツにも忍び寄ってきているのを知っていた。この詩は、死の影が忍び寄る現実世界と対比して人の世の苦悩を知らないナイチンゲールの歌声に魅了され、理想的な...