民法判例―長期別居中の懐胎子と嫡出推定
論点「嫡出推定が働く場合には、夫からの嫡出否認の訴えがなければ、
子は生物学上の父に対し認知請求をすることができないか。」
最判昭和44年5月29日第一小法廷判決
<序論>
嫡出推定とは、民法772条の規定の「妻が婚姻中に懐胎した子は、夫のこと
推定する」という子の父性推定と嫡出性付与の2つの推定が同時に働く推定であ
る。嫡出推定を受ける子は、民法774条、775条に定める嫡出否認の訴えま
たは家事審判法23条による審判によらなければ、嫡出子としての身分を奪われ
ないという早期の「親」の確定という利益を得られる。また、嫡出否認の訴えは
原則として...