比較優位(比較生産費)説から始まる国際貿易の理論の主要な発展について説明する。
一般的に、国際競争力は財の価格、品質そしてそれらを前提とした需要の存在によって決まる。貿易される財は各国の価格体系に依存せざるをえない。それは国際間では資源の賦存状態、技術水準、生産能力、嗜好、購買力などそれぞれに差異があるため、財を安価に生産できる国とそれらを生産するのに多額の費用をかけないとできない国とが存在する。このように、異なる価格体系を持つ国が経済的に関係を持つことによって生ずる財貨の交流により、貿易が発生する。このような事実に基づいて発生する貿易に対して、2つの側面から考えられる。第1側面 各国間で生じる能力、適性を前提として一国が何を輸出し、何を輸入するか。それらの行為によってどのような貿易利益が生じるかを問う側面。第2側面 各国がある時点で所有する能力、適性そのものが、どのような原因により生じるものかを問う側面。
この、第1側面を取り上げて初めて理論化したのがイギリスの経済学者、D.リカードである。彼のこの理論を通常、比較生産費説と呼ぶ。第2側面はリカードも無視したわけでないが、理論を...