大阪教育大付属池田小児童殺傷事件において、宅間被告は、2001年6月8日午前10時10分ごろ、大阪府池田市の小学校に乱入、8人の児童を殺し、教師2人を含む15人に重軽傷を与えた。事件の特異性もさることながら、社会問題として注目されたのは、被告が過去に傷害容疑で逮捕されながら、精神障害を理由に不起訴になっていたことがわかったからだ。大阪地検は、「人格障害ではあるが、刑事責任能力はある」とする精神鑑定と「責任を免れるために精神障害を装っていた」という本人の供述を受けて、同年9月、殺人・殺人未遂罪で起訴した。
論告求刑(2003年5月22日)は、「わが国の犯罪史上、特筆すべき凶悪かつ重大な無差別大量殺人」と断罪した。これに対し、弁護側は、死刑を回避する立場から、被告が幼少時にいじめにあい、17歳から精神病院への入通院を繰り返していたことなどを挙げ、「善悪を分別し、これに従って行動する能力を欠く心神喪失か、著しく制約された心身耗弱にあった」と主張、事実上の無罪、または減刑を求めた。その根拠は、「心神喪失者の行為は、罰しない」、「心身耗弱者の行為は、その刑を軽減する」と規定した刑法第39条1、2項である。また、弁護側は、被告が脅迫思考や被害妄想など多様な精神症状を呈し、かつて複数の精神科医によって精神分裂病(統合失調症)と診断されたことも強調した。
法に触れる精神障害者の処遇でいつも問題になるのが、刑事責任能力の有無だ。起訴する前に精神鑑定が行われるが、精神疾患が認められると、不起訴または起訴猶予となる。不起訴の場合は、精神保健福祉法に基づく指定医2名以上の診断を経て措置入院が決定する。一方、自傷他害の恐れがないと主治医が判断すれば退院となる。宅間被告の場合は公判の過程でも精神鑑定が行われた。ちなみに1995−2000年の統計によれば、犯罪を犯した精神障害者のうち約9割が刑法第39条により不起訴になっている。
大阪教育大付属池田小児童殺傷事件において、宅間被告は、2001年6月8日午前10時10分ごろ、大阪府池田市の小学校に乱入、8人の児童を殺し、教師2人を含む15人に重軽傷を与えた。事件の特異性もさることながら、社会問題として注目されたのは、被告が過去に傷害容疑で逮捕されながら、精神障害を理由に不起訴になっていたことがわかったからだ。大阪地検は、「人格障害ではあるが、刑事責任能力はある」とする精神鑑定と「責任を免れるために精神障害を装っていた」という本人の供述を受けて、同年9月、殺人・殺人未遂罪で起訴した。
論告求刑(2003年5月22日)は、「わが国の犯罪史上、特筆すべき凶悪かつ重大な無差別大量...