『現代の道徳教育の課題について述べよ』

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    『現代の道徳教育の課題について述べよ』
    1996年の第15期中央教育審議会第1次答申では新しい教育目標として「生きる力」が提示された。この「生きる力」とは「確かな学力」、「健康・体力」、「豊かな人間性」の三つの能力から構成されていると解される。「確かな学力」とは知識・技能に加え、自分で課題を見つけ、自ら学び、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する資質や能力である。学力向上は学校の目標の一つであるが、かつての「教育の現代化」以降にみられた諸問題の噴出を考えると従来どおりの詰め込み教育では決して「生きる力」にはつながらないと考えられる。それは点数による評価を目的とした学力だけでは今の変化の激しい社会では生きていけないのが分かってきたからである。「健康・体力」とはたくましく生きる為の健康や体力を意味し、生命の基本となる部分である。「豊かな人間性」とは自らを律しつつ、他人とともに協調し、他人を思いやる心や感動する心など、と解され、道徳的心情、判断力、実践意欲といった道徳性を特に必要とされる能力といえる。以上三つの能力が教育現場においてバランスよく発達していくことが望ましいが、そのためには道徳教育は欠くことのできないものとして位置づけられている。しかし、その「生きる力」を育むための現代の道徳教育には、いくつかの課題が含まれている。平成10年に改訂された小学校学習指導要領解説(総則編)(平成11年、文部科学省)の第1章総説、(2)改訂の基本方針で指摘されているように、「道徳教育については、道徳の時間が十分に確保されていないこと、道徳の時間に興味・関心を持っている児童の割合が高学年にいくほど低下していることなど」、があり、これまで行なってきた道徳教育の課題を明示している。そしてこれらを踏まえ、「豊かな人間性」能力の育成の為に道徳教育や特別活動におけるボランティア活動や自然体験活動などの体験的な活動の充実、道徳教育における低学年の善悪の判断や社会生活上のルールなど重点的な指導の工夫、障害のある幼児・児童・生徒や高齢者との交流の推進、第3学年からの保健学習の導入など心身の健康に関する教育の充実、社会科における人物・文化遺産中心の歴史学習の徹底などの改善を図っている。しかし学習指導要領の主旨を受けた学校現場の道徳教育の実状は残念ながら一部熱心に取り組んでいる学校は別としても、ほとんどの学校では、道徳教育に力を入れている学校は少ないと考えられる。その理由としてはいくつか考えられるが、第一に、教師の間に未だに戦前の教育勅語に基づく「教化」型の修身教育に対するアレルギーからくる道徳教育の蔑視感があるように思われる。第二に、目前に起こるトラブルやその他の学級の問題の処理に道徳の時間が使われやすい。第三に、学力を確実につけるためには正規の時間だけでは足りず、道徳の時間が他の教科の補習の時間に使われやすい。第四に、道徳教育は学校教育活動全体で行なうという主旨から、結果や効果がすぐに出ない活動として軽視される、等が考えられ、学校側の道徳教育の捉え方、運用の仕方も問題であり課題といえる。指導要領第1章総則第1の2の道徳教育及び道徳の時間の目標に関して次のように書かれている。「学校における道徳教育は、学校の教育活動全体を通じて行なうものであり、道徳の時間をはじめとして各教科、特別活動及び総合的な学習の時間のそれぞれの特質に応じて適切な指導を行なわなければならない。」とあるように、単に教室で行なわれる道徳の時間だけでは児童に概念的な道徳しか与えられず、やはり学校教育活動全体を通

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    『現代の道徳教育の課題について述べよ』
    1996年の第15期中央教育審議会第1次答申では新しい教育目標として「生きる力」が提示された。この「生きる力」とは「確かな学力」、「健康・体力」、「豊かな人間性」の三つの能力から構成されていると解される。「確かな学力」とは知識・技能に加え、自分で課題を見つけ、自ら学び、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する資質や能力である。学力向上は学校の目標の一つであるが、かつての「教育の現代化」以降にみられた諸問題の噴出を考えると従来どおりの詰め込み教育では決して「生きる力」にはつながらないと考えられる。それは点数による評価を目的とした学力だけでは今の変化の激しい社会では生きていけないのが分かってきたからである。「健康・体力」とはたくましく生きる為の健康や体力を意味し、生命の基本となる部分である。「豊かな人間性」とは自らを律しつつ、他人とともに協調し、他人を思いやる心や感動する心など、と解され、道徳的心情、判断力、実践意欲といった道徳性を特に必要とされる能力といえる。以上三つの能力が教育現場においてバランスよく発達していくことが望ましいが、そのために...

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