『適応・不適応の心理的機制、またはそれから引き起こされる特徴的行動について説明せよ』
『適応』とは、主体としての個人が、その欲求を満足させようとして、環境の諸条件と調和するためにとる行動や態度の調整のことである。「適応」という言葉は本来生物学で使われるが、この場合は「順応」、ないしは「調節」ということばで言い表されることがある。しかし、人間においては、むしろそれ以上に家庭や近隣、学校や職場といった社会的環境に対しての心理的・文化的「適応」がより重要な意味を持ってくる。そして、人間は適応するために、目標を定めたり、学習や訓練を受けたりと、さらに、時には環境そのものを変化させようと試みるなど、自らの行動を調整するのである。
この適応によって、人は、自己の欲求や願望を実現し、より活発な生の展開を目指して、環境を意図的に変革し、状況を操作するのである。しかし、時として、欲求充足を阻害する障壁や困難にぶつかることもある。それに対処する仕方を働かせる心的機能の基本となる機制、あるいは適応への努力を「適応機制」という。
次に、主な「適応機制」を挙げて簡単に説明してみる。
1,抑圧 自我が不安や破局を起こしそうな衝動やそれに結びついた観念や感情を無意識の中に押し込める働きをいう。「抑圧」された衝動や感情はもつれ合って、「コンプレックス」を形成し、日常生活でのあやまち行為や夢などに現れることがある。過度の「抑圧」は、自我の十分な機能を妨げ、正常で積極的な適応を妨害するもとになる。
2,合理化 「人がいたから、集中できなかった」というように、自分の失敗や欠点に都合の良い理屈付けをすることで自分の立場を正当化し、非難をかわしたり、失敗感や劣等感から逃れようとすること。
3,補償 スポーツが苦手な子どもが、勉強で努力して良い成績をとるといったように、他の面で人より優越することで自分の弱点や劣等感を補おうとすること。
4,代償 本来の目標が得られないとき、獲得しやすいほかの目標によって満足する機制である。海外旅行は高いので、国内旅行にするなどはこの例である。
5,置き換え ある対象に向けられていた感情や態度が、別の代理の対象に向けて表現されること。会社の上司に対する不満や敵意を、部下に当たったりすることなどがこれである。
6,反動形成 抑圧された欲求や願望とは正反対の傾向を持つ行動や態度をとろうとする機制。過度に親切であったり、丁寧であったりすることの背後に、憎悪や敵意が現れることへの強い不安があることがある。
7,投影 自分でも認めがたい自らの欲求や衝動、或いは弱点などを他人の中に見いだし、それを指摘したり非難することによって、不安を解消しようとすること。自身の無い人ほど、他人の欠点を批判したりする。
8,同一視 対象の望ましい属性を、あたかも自分自身のものであるかのようにみなし、同じように考え、感じ、行為することによって、満足や安定を得ようとすること。チームでの優勝を自分自身の優越性のように感じて、それを誇示するなどがこの例である。
9,退行 精神分析の理論において、現在の状態より以前の状態へ、あるいはより未発達な段階へと逆戻りすることである。
10,逃避 不安や緊張、葛藤などをもたらすような状況を回避することによって、一時的にせよ自分を守ろうとすること。学校を無断で欠席して引きこもったり、実際とはかけ離れた空想や白昼夢の世界で欲求を満足させようとすることもこれに含まれる。
11,昇華 社会的に認められない欲求や衝動が生じたとき、芸術やスポー
『適応・不適応の心理的機制、またはそれから引き起こされる特徴的行動について説明せよ』
『適応』とは、主体としての個人が、その欲求を満足させようとして、環境の諸条件と調和するためにとる行動や態度の調整のことである。「適応」という言葉は本来生物学で使われるが、この場合は「順応」、ないしは「調節」ということばで言い表されることがある。しかし、人間においては、むしろそれ以上に家庭や近隣、学校や職場といった社会的環境に対しての心理的・文化的「適応」がより重要な意味を持ってくる。そして、人間は適応するために、目標を定めたり、学習や訓練を受けたりと、さらに、時には環境そのものを変化させようと試みるなど、自らの行動を調整するのである。
この適応によって、人は、自己の欲求や願望を実現し、より活発な生の展開を目指して、環境を意図的に変革し、状況を操作するのである。しかし、時として、欲求充足を阻害する障壁や困難にぶつかることもある。それに対処する仕方を働かせる心的機能の基本となる機制、あるいは適応への努力を「適応機制」という。
次に、主な「適応機制」を挙げて簡単に説明してみる。
1,抑圧 自我が不安や...