中部原子力懇談会主催
~平成19年度エネルギー・環境研究会 セミナーA~
講演:四日市大学環境情報学部教授
クィーンズランド大学客員教授 新田義孝
1 今、地球で何が起こっているのか
(1)人口増加とエネルギー大量消費
(2)エネルギー資源の供給制約
(3)地球温暖化問題
2 日本のエネルギー情勢
(2)エネルギーの効率利用技術は世界一
3 エネルギー環境問題の解決策は?
(1)新エネルギーの現状と課題
(2)省エネ、バイオマス燃料、ハイブリッド車などさまざまな取り組みも
(3)CO2を排出しない原子力発電
「エネルギーデータから世界を読む」 中部原子力懇談会主催 ~平成19年度エネルギー・環境研究会 セミナーA~ 講演:四日市大学環境情報学部教授 クィーンズランド大学客員教授 新田義孝
1 今、地球で何が起こっているのか (1)人口増加とエネルギー大量消費
1―1 人類とエネルギーのかかわり
人類とエネルギーのかかわりは、数百万年前の「火の発見」から始まり、18世紀の動力革命以降はエネルギー消費量が急増している。
世界人口の動向と長期的予測
出典:「全予測2030年のニッポン(三菱総合研究所編)」より抜粋 出所:国連”World Population Prospects : The 2004 Revision”および
国連”World Population Projections to 2150 Population Division”より三菱総合研究所作成
世界および中国インドの人口ピラミッドの変化
世 界
中 国
インド
2005年
2030年
出典:「全予測2030年のニッポン(三菱総合研究所編)」より抜粋 出所:国連”World Population Prospects:The 2004 Revision”より三菱総合研究所作成
各国の人口増加と一人当たりエネルギー消費量の増大
一人当たり年間エネルギー消費量(石油換算トン)
人口(億人)
0
2
4
6
10
8
I
10
I
20
I
30
0
(BP統計2006、外務省資料等を元に中原懇事務局が作成)
1 今、地球で何が起こっているのか (2)エネルギー資源の供給制約
石油、石炭、天然ガス、ウランの確認可採埋蔵量
1 今、地球で何が起こっているのか (3)地球温暖化問題
COP-3(1997年京都国際会議場)
出典:環境省HP
2―1 温室効果のしくみ
二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスは、太陽から届く波長の短い光はよく通すが、地表から出ていく赤外線(熱)を吸収し、一部を再び地表に戻す性質がある。このためCO2などの濃度が高まると赤外線が宇宙に出られなくなり、地表温度の上昇につながる。
2―3 化石燃料等からのCO2排出量と大気中のCO2濃度の変化
産業革命以降、人類は膨大な量の化石燃料を燃やしてきたため、近年は大気中の二酸化炭素(CO2)濃度が急増している。また、セメント製造などに伴うCO2排出量も増加している。
2―5 平均気温の変化
地球表面の年平均気温は、100年間あたり0.66℃の割合で上昇している。一方、日本の年平均気温は、100年間あたり1.06℃の割合で上昇している。
図 SPM-5:実線は、A2、A1B、B1 シナリオ及び20 世紀の状態を継続した場合における複数のモデルによる(1980~1999 年と比較した)地球平均地上気温の昇温を示す。陰影部は、個々のモデルの年平均値の標準偏差の範囲。橙色の線は、2000 年の濃度を一定に保った実験のもの。右側の灰色の帯は、6 つのSRES シナリオにおける最良の見積り(各帯の横線)及び可能性が高い予測幅。灰色の帯で示された最良の見積り及び可能性が高い予測幅の推定には、図の左側に示したAOGCM モデル実験に加えて、一連の階層の独立したモデル及び観測結果からの制約から得られた結果を含む。(図10.4 及び10.29)
将来の気候変化に関する予測(IPCC第4次評価報告書)
2 日本のエネルギー情勢 (1)経済発展とともに変わる ライフスタイル
電気製品に見る暮らしの移り変わり①(明治~戦前)
出典:中部電力㈱資料
電気製品に見る暮らしの移り変わり②(戦後~現代)
出典:中部電力㈱資料
1―14 日本の一次エネルギー供給実績
日本の一次エネルギー供給量は近年も増加傾向にあり、また石油危機以降も石油への依存度が高い。一方、水力や国内炭が中心であった1950年代には80%あったエネルギー自給率は大幅に低下している。
2 日本のエネルギー情勢 (2)エネルギーの効率利用技術 は世界一
2―15 火力発電設備の熱効率(高位発熱量)・送配電ロス率の推移
日本では、火力発電からのCO2排出量低減のため、コンバインドサイクルの導入などにより熱効率を向上させている。また、送配電損失も年々低下しており、電力設備を効率よく運用している。
例:川越火力発電所 1・2号機
例:川越火力発電所 3・4号系列
2 日本のエネルギー情勢 (3)エネルギー資源は海外に依存
部門別最終エネルギー消費量の推移
1―10 主要国のエネルギー輸入依存度
日本はエネルギー資源の約8割(原子力を除くと96%)を輸入に頼り、他の主要国と比べエネルギー供給構造が脆弱な状況となっている。
1―15 日本が輸入する化石燃料の相手国別比率
日本が輸入する原油の9割は中東諸国から輸入している。また、石炭はオーストラリア、天然ガス(LNG)は東南アジア諸国が主な輸入相手となっている。
1―16 原油輸入の中東依存度の推移
日本の原油輸入の中東依存度は一時67.9%まで低下したが、最近では石油危機以前の水準に戻っている。
3 エネルギー環境問題の解決策は? (1)新エネルギーの現状と課題
3―4 新エネルギーの現状(太陽光・風力)
太陽光や風力発電は、現状ではコストが高く、しかもエネルギー密度が低いため(大量に発電するには広い土地が必要)大電力の供給には不向きである。しかし、特定地域での利用(小規模分散型利用)は可能である。
3―5 太陽光・風力発電の出力変動
太陽光発電は時間と天気により、また風力発電は風の強さにより発電電力量が変動するため、バックアップ電源が必要である。
3 エネルギー環境問題の解決策は? (2)省エネ、バイオマス燃料、ハイブリッド車などさまざまな取り組みも
省エネルギーの取り組み(トップランナー方式)
出典:資源エネルギー庁 (財)省エネルギーセンター資料
出典:資源エネルギー庁 (財)省エネルギーセンター資料
トップランナー方式による省エネ効果
ハイブリッド車(トヨタ プリウス)
3 エネルギー環境問題の解決策は? (3)CO2を排出しない原子力発電
2―9 各種電源別のCO2排出量
原子力の発電電力量あたりCO2排出量は、石炭火力、石油火力、LNG火力はもちろん、太陽光、風力などの自然エネルギーに比べても少ない。
発生電源別のエネルギー収支比(EPR※)
出典:「電中研ニュース439(電力中央研究所発行)」より抜粋(上席特別契約研究員 天野 治 氏による)
※EPR=energy profit ratio
各種の災害と原子力発電所事故による死者数の比較
(社)日本電気協会 新聞部 発行
「原子力発電の話」(著:竹内榮次)より抜粋