歴史とは、人が人を生み子孫を残していく中で、遺伝情報に含まれない人類の記憶。文化や政治の時間の流れの中で、過去にあらゆる事象が起きたということの証である。漢字の意味上、「歴」は「次々に巡り歩く」という意を持っている。また、「時を経る」とか「数える」という意味も孕んでいる。一方の「史」もともと、「天体の運行を計算して暦を作る人」を表し、それが転じて「歴史的な計算を司る人物や書物など」を意味するようになった。すなわち、漢字の意味という観点から「歴史」の意味を定義するならば、「過去の事象を時間の概念にてまとめ上げたもの」ということになるだろう。......
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ドイツの歴史学者ベルンハイムの記述から歴史学の偏移を見てみる。彼は歴史学の発達は主に3つに分けられるという。まずは物語風歴史。これは関心のある範囲内での歴史的素材を時間や場所の順序に沿ってみていくという、いわゆる歴史叙述である。続いて教訓的歴史。過去の事件をもとにして、現在に応用しようとするものである。歴史学はただ過去を回顧し、そこへ立ち戻ることのみならず、過去を知ることで未来を予測し、来るべき時に備えて最良の選択肢を用意することにつながるといえる。実際に古代ギリシャのトゥキディデスがペロポネソス戦争に関連して著した『歴史』は教訓的歴史の典型であるとされ、昔と似た政治的状況に対しては過去の知識から有用な教訓が得られると述べている。だがこれには古代ギリシャの当時の歴史的概念が深く根ざしており、その概念とは歴史の反復及び循環であった。
歴史の意味と研究方法の偏移
歴史とは、人が人を生み子孫を残していく中で、遺伝情報に含まれない人類の記憶。文化や政治の時間の流れの中で、過去にあらゆる事象が起きたということの証である。漢字の意味上、「歴」は「次々に巡り歩く」という意を持っている。また、「時を経る」とか「数える」という意味も孕んでいる。一方の「史」もともと、「天体の運行を計算して暦を作る人」を表し、それが転じて「歴史的な計算を司る人物や書物など」を意味するようになった。すなわち、漢字の意味という観点から「歴史」の意味を定義するならば、「過去の事象を時間の概念にてまとめ上げたもの」ということになるだろう。
E.T.カーは『歴史とは何か』のなかで「歴史は、確かめられた事実の集成からなる」と記述した。現在という時点の視点から立って、過去というかつての現在を眺めたときの事実。もちろん見逃しや取るに足らない過去もあり、現在から離れた過去であるほど霞んで見えるし、ハッキリしない部分が多く出てくる。だが、過去より引き継がれた史料などの情報を用いて、過去に何があったのかを明確に判断しなければならない。では過去の事象が歴史的であると思われる...