私は「アラブ」というと、どうも甘美な空想世界を思い浮かべてしまう。「アラビアン・ナイト」や「アラジン」などで描かれる少し謎めいた世界。それから、夜を行くキャラバン隊の砂漠と月と歌の世界。先入観として私はそんなイメージを抱いている。こういったファンタジー的な視点から、興味を持ったのがはじまりだが、その実際はどうなのだろうか。
日本人にとってアラブ世界は、地理的にも文化的にも、なかなかに「遠い国」といえる。イスラム教が強く根付いたアラブ文化はあまり馴染みのないものだし、農耕・定住に基づく日本人の暮らしからは遊牧民の移動生活がどういったものかは想像もつかない。それでも昨年のテロ事件の影響から、皮肉にもアラブ世界への関心は高まるようになったが、同時に悪印象や先入観もついてまわり、なかなかその姿は見えてこない。
まさか私の思い描くような世界が本物だとは思わないし、だからといって昨今メディアで語られる世界にも、視点に偏りがあるようだ。ならば、人々の生の生活に潜入したこの本ならば。そんな思いから私はこの本を選んだ。
実際読んでみると、私があまりにも「想像」ばかりでこの世界を見ていたことを改めて知らされた。たしかに「砂漠」や「夜」、「歌」といったキーワードとしては外していないのだが、何か根本的なものがつかめていない。アラブの人々の一日は日没に始まるというが、そういった基本的なことでさえ私は知らなかった。
アラビア・ノート
~アラブの原像を求めて~
片倉もとこ著
私は「アラブ」というと、どうも甘美な空想世界を思い浮かべてしまう。「アラビアン・ナイト」や「アラジン」などで描かれる少し謎めいた世界。それから、夜を行くキャラバン隊の砂漠と月と歌の世界。先入観として私はそんなイメージを抱いている。こういったファンタジー的な視点から、興味を持ったのがはじまりだが、その実際はどうなのだろうか。
日本人にとってアラブ世界は、地理的にも文化的にも、なかなかに「遠い国」といえる。イスラム教が強く根付いたアラブ文化はあまり馴染みのないものだし、農耕・定住に基づく日本人の暮らしからは遊牧民の移動生活がどういったものかは想像もつかない。それでも昨年のテロ事件の影響から、皮肉にもアラブ世界への関心は高まるようになったが、同時に悪印象や先入観もついてまわり、なかなかその姿は見えてこない。
まさか私の思い描くような世界が本物だとは思わないし、だからといって昨今メディアで語られる世界にも、視点に偏りがあるようだ。ならば、人々の生の生活に潜入したこの本ならば。そんな思いから私はこの本を選んだ。
実際読んでみると、...