1. 日本国憲法は、その前文で「(国政の)権力は国民の代表者がこれを行使(する)」として代表民主制を宣言しており、「命令的委任」とは、このような国民の代表者である国会議員が国民、さらにいえば選挙民としての国民の意思に法的に拘束されるという考え方のことである。
そこで「命令的委任」制度の導入は認められるかの検討を行うにあたり、日本国憲法が採用する代表制はいかなる性質のものか、そしてその代表制を基礎づける国民主権原理をどのように理解すべきかが、まず問題となる。
2. 日本国憲法は、前文で「主権が国民に存する」ことを宣言し、1条で天皇の地位が「主権の存する国民の総意に基づく」として国民主権原理を掲げる。
(1) まず「主権」の概念については、多義的ではあるが、歴史的理由に基づき、一般に(a)国家権力そのもの(すなわち、国家の統治権)、(b)国家権力の属性としての最高独立性(すなわち、対内的には他のいかなる権力主体にも優越して最高であり、対外的には他のいかなる権力主体からも独立していること)、(c)国政の最高決定権(すなわち、最高独立性をもった国家内部において、誰が政治のあり方を最終的に決定できるかということ)、という3つの異なる意味に用いられる。
(2) 次に主権の主体、すなわち「国民」の意味については、従来から主に、「日本人の全体」として捉える「全国民主体説」と、「有権者の総体(選挙人団)」と捉える「有権者主体説」との見解の対立があるが、主権主体の検討に際しては、以下の点を踏まえる必要がある。
憲法Ⅱ
【国会議員について、いわゆる「命令的委任」制度を導入する法律を制定することは認められるか】
1. 日本国憲法は、その前文で「(国政の)権力は国民の代表者がこれを行使(する)」として代表民主制を宣言しており、「命令的委任」とは、このような国民の代表者である国会議員が国民、さらにいえば選挙民としての国民の意思に法的に拘束されるという考え方のことである。
そこで「命令的委任」制度の導入は認められるかの検討を行うにあたり、日本国憲法が採用する代表制はいかなる性質のものか、そしてその代表制を基礎づける国民主権原理をどのように理解すべきかが、まず問題となる。
2. 日本国憲法は、前文で「主権が国民に存する」ことを宣言し、1条で天皇の地位が「主権の存する国民の総意に基づく」として国民主権原理を掲げる。
(1) まず「主権」の概念については、多義的ではあるが、歴史的理由に基づき、一般に(a)国家権力そのもの(すなわち、国家の統治権)、(b)国家権力の属性としての最高独立性(すなわち、対内的には他のいかなる権力主体にも優越して最高であり、対外的には他のいかなる権力主体からも独立していること)、...