総合学習と学力
―和光小学校の総合学習を通して―
はじめに
世論では今、「学力向上キャンペーン」なるものが起こっている。
「今の大学生の10人に1人は小学校の分数の問題ができない」といった帯つきの本が出版されたことを皮切りに、2003年のPISA(学習到達度調査)で前回2000年のPISAに比べ日本の順位が下がったことが、学力低下の証拠として日本国内で大きく報道され学力低下論争につながった。当時の文科省大臣も、傾向としては「学力低下」の方向にあると危機を訴え、学習指導要領全体の見直し、教員の指導力向上、全国学力調査(全国すべての小学5年生と中学2年生が参加)などの改善策を表明した。
しかし、PISAの2003年調査は前回の2000年調査とは対象国が異なる上、日本の成績自体は、前回調査と比べ統計的に差はないとされている。OECDや教育学者による分析結果では、日本は依然として1位グループに入るとされており、日本の順位が下がったことを「学力低下」とする議論は、統計的に正確とはいえない。さらに、これまで2回実施されたPISAで高い平均点を取ったフィンランドには、日本を含めた世界各国からの...