産業心理学の知見を社会にどのように応用できるか
産業心理学とはどのような心理学だろうか。産業心理学とは、簡単に言えば、“企業組織”という人間のあつまりについての研究や、広告やマーケティングに関する研究などの分野である。組織心理学とも呼ばれる。心理学という学問の中で考えると、社会心理学の一部とも考えられる。言い換えると、人間が経済社会の中にコミットして生きていくことに焦点を当て、個人が充分に能力を発揮できるように工夫するための学問である、ということが出来る。
では、産業心理学は、心理学という学問体系の中でどのポジションに位置するかという視点で整理してみる。まず、産業心理学は、臨床心理学や犯罪心理学と同様に、応用心理学である。しかし、臨床心理学や心理療法学のような臨床現場での実践に根付いた研究ではなく、社会心理学や犯罪心理学のように実験観察や種々の方法を用いた調査によって研究方法を取る。つまり、さまざまな理由により社会に適応できない状況にある人にアプローチするのではなく、それなりに社会に適応できている状態にある人がより良い環境で能力を発揮できるようアプローチする心理学であると言える。同...