1.はじめに
縄文時代を通じて植物質食料が主要な地位を占めていたことは多くの研究者に共通する見解である。にもかかわらず研究は必ずしも進展しているとはいえない。それは低湿地の特殊泥炭層の中や何らかの要因で炭化しないと植物遺存体が残存しにくい現状、またたとえ遺存したとしても確実に食料となった証明が難しいなどといった研究の困難さに原因がある。
縄文時代の食用植物については、1980年代以降調査例が著しく増加し、また同定方法や精度も格段に高まったこともあり、堅果類、ヒョウタン、ソバ、マメ、イネなど多くの植物が遺跡から報告されている。
しかし現在のところ植物資源のなかでは、発見例や分布的特徴をふまえて、議論可能なのは結局のところ堅果類に限定されてしまう。なので、本発表では堅果類のの食用方法について述べていきたいと思う。
縄文時代の植物食について-堅果類の研究を中心に-
1.はじめに
縄文時代を通じて植物質食料が主要な地位を占めていたことは多くの研究者に共通する見解である。にもかかわらず研究は必ずしも進展しているとはいえない。それは低湿地の特殊泥炭層の中や何らかの要因で炭化しないと植物遺存体が残存しにくい現状、またたとえ遺存したとしても確実に食料となった証明が難しいなどといった研究の困難さに原因がある。
縄文時代の食用植物については、1980年代以降調査例が著しく増加し、また同定方法や精度も格段に高まったこともあり、堅果類、ヒョウタン、ソバ、マメ、イネなど多くの植物が遺跡から報告されている(表1)。
しかし現在のところ植物資源のなかでは、発見例や分布的特徴をふまえて、議論可能なのは結局のところ堅果類に限定されてしまう。なので、本発表では堅果類のの食用方法について述べていきたいと思う。
2.堅果類とは
クリ、クルミ、ドングリ類、トチなどの堅い果皮を持った木の実のこと。比較的残存しやすいので、遺物包含層、貝層、泥炭層、洞窟、岩陰、住居址、土器内、貯蔵穴内など様々な場所から出土例がある。また遺...