ここでは主に上海の公共租界と江蘇省における電力産業の発展を時系列的に述べていくことで、近代中国の電力産業の特徴をみていきたい。
1882年、上海公共租界においてイギリス人が上海電工公司という電灯会社を設立し、照明向け電力の供給を開始したことから近代中国の電力産業は始まる。電灯実験から導入後の約10年間の上海電力産業は規模が小さく、経営が不安定であった。しかし、19世紀末から20世紀初頭、工業発展のなかで大規模で外資系が多く繊維工業中心に発展したしてきた楊樹浦地区の資本の蓄えと公共租界の人口増加によって、電力産業市場に対する潜在的需要条件が公共租界は他の地域よりもそろっていた。このことにより、清末から民国初期において、家庭照明向け電力供給量だけでなく、工場の新設ラッシュに対応し原動力という新市場を開拓したことで原動力及び電熱向け電力供給量も急増した。
このころ、江蘇省は極めて早期に工業化し全国工業資本の10.5%が集中した地域であった。しかし、1902年に初の発電所ができた後も幾つかの電力会社が設立したものの、設備投資に巨額な資本が必要なこともあり、小規模で市場としても照明向けで漸く...