テーマ:「選択的併合」概念の必要性
1 選択的併合に関する議論
「選択的併合」とは、数個の請求のうちいずれか1個の請求が認容されることを、他の請求についての訴えの申立ての解除条件とする併合形態のことである。
雉本は、原告の便宜・裁判の迅速化の観点から「選択的併合」の概念を認めている。
また、「法律実務講座(2)」 によると、選択的併合が認められるのは「原告が訴訟遂行によつて達成しうる利益は経済的には単一であり、その法律的理論構成が数個あるにすぎないから、いづれか一の理論構成(請求原因)が是認されれば、どれが是認されてても、訴訟の目的を同様に達成しうるという関係上、迅速解決のためには、併合の一般的形態である単純併合よりも選択的併合が優れているという合理的理由」がある場合としている。
その後、新訴訟物理論(以下新訴)が日本で有力になり、旧訴訟物理論(以下旧訴)への批判として、請求権競合の場面を指摘した。つまり、一つの事実から複数の請求権が発生するとき、旧訴訟物理論によると複数の債務名義が付与される可能性があり、実体法が一回の給付結果しか是認していない場合においては妥当であるとは言え...