教育心理学・第2設題

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    適応・不適応の心理的機制、またそれから引き起こされる特徴的行動について説明せよ。
     「適応」  人は様々な環境に対して反応して生活を営んでいる。その環境は、日々刻々と変化しているので、人が生きていくためには、その環境と状況に応じた行動をとらなくてはならない。更に、単なる生命の保全だけでなく、欲求を満たして行動が出来るように、行動の調整をしていく。このように、主体としての個人が、欲求を満足させようとして、環境の諸条件を調和するためにとる行動や態度の調整を「適応」と呼ぶ。この「適応」の様態に関して、その元にある人の行動を引き起こす特徴的行動に「動機づけ」と欲求の種類、その対立に起因する不適応状態の「葛藤」や阻害されて生じる「欲求不満」、そして、これらの対処の仕方としての「適応機制」と「防衛機制」がある。 まず、動機づけとは、「動機」によって人間や動物が「目標」に向かって、ある種の行動に駆り立てられる心理的な作用である。「動機づけ」には「動機」が活動している状態であるが、一般的に「動機づけ」ということばの中に「動機」も含まれているものとして扱われる。「動機づけ」を引き起こす様々な「動機」には、以下に述べるようなものがある。「生理的動機」または「一次的動機」と呼ばれる個体保存のための動機や、種族保存のための動機。「内発的動機」と呼ばれる外的報酬を得る事では解消せず、活動それ自体が報酬となるような動機。「学習性動機」と呼ばれる苦痛や危険から回避、排除するなど経験によって獲得される動機。さらに「社会的動機」と呼ばれる、高い目標を目指しつつ困難に対処して、自己に打ち克ち、競争場面において人に優りたいとする「達成動機」や、人間などが授乳による欲求充足よりも、温かい接触による愛撫や安心感を求めるとする「愛着動機」などの動機。「自己実現動機」と呼ばれる自分の持っている才能や能力、また潜在能力などを開発し、十分に発揮しようとする動機などがある。  次に「葛藤」とは個人の内部に相反する2つあるいはそれ以上の目標が同時に生じ、その上それらに同じ程度の関わり合いを望んでいる自分を感じた時、動きのとれない自己の状況を認知する。このような状況が「葛藤」と言われる。葛藤状況は個人がその目標を肯定的なものとして、あるいは否定的なものとして感じているかどうかによって、以下に述べるような3つの型に分類出来る。幼児が誕生日に1つ玩具を買ってもらう時、Aの玩具とBの玩具の選択を迫られるような状況を「接近―接近」型の葛藤。大学生が勉強をしたくないけど、留年も嫌だという場合の「回避―回避」型の葛藤。大学生が単位は取りたいが、授業には出たくないというような場合の「接近―回避」型の葛藤。これらの3つの型の葛藤が基本形で、実際に私たちは、これらが複雑に絡み合った状況で葛藤を経験しているのである。葛藤がどのような型で生じるとしても、必ずしも情動的反応を起こすとは限らない。しかし葛藤状況が解決されず、長期間緊張状態が続くときには、情動的混乱を招くことが多々ある。そのような場合は、個体は葛藤から脱却するために、様々な対処行動を試みる。その代表的なものとして、「代償行動」の採用と「要求水準」の調節がある。「代償行動」とは、類似した別の欲求を満たす行動をとることで、本来の欲求阻止から来る緊張状態が緩和されるならば、その行動は本来の行動に対して代償的役割を演じているというような行動を指す。次に「要求水準」とは、個体は行動に際して普通「最低ここまでは」とか、「これくらいならば大体満足できる」というような目標を掲げる。そして、行動の結果がその目標水準に達しているかどうかで満足したり、不満になったりする。このような目標水準を「要求水準」と呼ぶ。
     次に「欲求不満」による欲求不満反応としては攻撃性、退行性、固着性の三つがある。口論、イライラ、八つ当たりなどといった行動があるのが攻撃性であり、人が既に通過した発達段階で示したのと同じ行動様式を示す場合、逆戻りと言う意味で、それを退行現象と呼ぶ。
    欲求充足が阻まれたまま、長期間の緊張状態が続くと、それを緩和させようとする行動の中に退行現象を見ることが出来る。たとえば弟や妹の誕生で母親を取られてしまったと思った時、幼児はすでに卒業していたはずの指しゃぶりや爪かみ、夜尿や甘えが再発することがある。退行反応によって「欲求不満」を解消したり軽減したりさせようとすることは、受身的で相手主導の配慮を待つ構えがうかがえる。
    固着性とは欲求が満たされないまま解決策もないという時、動きの取れない自分に気づき、自己の内部に閉じ篭ってしまうことである。
     「適応」は欲求充足を阻害する障壁や困難にぶつかった時に、それに対処する仕方を働かせる心的機能の基本となる機制、あるいは適応への努力を「適応機制」という。「適応機制」は自覚的・理性的であるか妥当な物であるかという観点から、正常な物と異常なものとに分けられる。
    不適応行動は、2つの大きな要因、すなわち、子どもの心身の発達的状況とそのときに置かれている環境的状況の力学的関係から生まれる。その表れ方は多種多様であるが、大抵は発達段階ごとに特有の問題行動が見られる。これは、発達段階ごとに特有の要因、すなわち、適応の問題と、とりわけ関わりの深い特徴的な心身の発達状況が存在し、それが問題行動の発症に関与していることを示すものであろう。
    ある種の病気にかかりやすい人(体質)がある。カゼをひきやすい人、かぶれやすい人、食あたりしやすい人、すぐ胃腸をこわす人・・・・。また、ある種の病気にかかりやすい時期がある。たとえば、乳児期では嘔吐、便秘、幼児期では下痢、喘息、児童期では・・・・。このように、病気は、体質的に脆弱であったり、未熟であったりして、抵抗力の弱い所が犯されて罹患してしまうのである。  精神的、心理的な障害=不適応行動、についても、全く同様なことが言える。自律神経失調症になりやすい人≒パーソナリティ、心身症になりやすい人、強迫神経症になりやすい人、非行・犯罪行為を繰り返す人・・・・。そして、自律神経失調症になりやすい時期、心身症になりやすい時期、強迫神経症になりやすい時期、非行・犯罪を繰り返しやすい時期・・・・。結局、発達との関わりでいえば、不適応行動は、発達しつつあるが、未熟な段階にある心身機能の機能障がいとして現れるのである。  情緒と自律神経は、どちらも間脳の視床下部にその中枢がある。いわば両者は、住居を共にする同居人である。そのため、一方のあり方が他方のあり方に大きな影響を与える。一方が病めば他方は混乱し、他方が健やかならば、一方もまた穏やかになる。
    こうして、心理的な不適応、例えば不安・緊張等は、自律神経系の働きを乱し、不眠・頭痛・めまい・下痢、嘔吐・頻尿・遺尿などの自律神経失調症状を一般的な症状として生み出すのである。生理的・身体的症状だけで、情緒的・人格的な不適応行動が全く現れない場合も決して少なくはない。自律神経失調症状は、心理的な問題が存在することを教えてはくれるが、具体的な不適応行動や、あるいは象徴的にその内容までは示してくれない。身体的症状だけで不適応の内容にまで立ち入ろうとする時には、より慎重な診断が求められるのである。

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