この物語は、ペドロ・パラモを中心に、その息子三人や妻といった関係者の人生を描いた小説であるが、何よりも驚いたのは、全ての登場人物がすでに死んでいるという点である。死んだ後に、ペドロ・パラモの息子の一人がペドロ・パラモを探しにコマラという町に行くところから物語が始まり、ペドロ・パラモが死ぬ場面で物語が終わる。そしてまた始めの場面に戻っていく、という構成になっている。
この小説を読んで注目した点が二点ある。
まず一つ目は、ペドロ・パラモが大地主になっていく場面である。大地主というと、現在の日本では大して権力者としてのイメージはないが、メキシコということもあり、この話の中ではその地方の最高権力者としての地位を表している。他の人を蹴落としてまで大地主になっていくペドロ・パラモは、認めてくれる人も何人かいたものの、多くの敵を作ってしまう。ラテンアメリカの小説に良く出てくる皆からあまり好かれない権力者になるというわけである。そのため、最愛の妻を亡くすときも、多くの人が、罰を受けていると言ってペドロ・パラモに同情しなかった。こういったペドロ・パラモの姿は、メキシコにおける地方社会の実情をよく表現していると感じた。
二点目は、死というものについてである。はじめにも述べたとおり、全ての登場人物は物語が始まる前に死んでしまっている。その上でペドロ・パラモの息子ファン・プレシアドがコマラに来て、そして物語が進んでいく訳である。
○「ペドロ・パラモ」を読んで
この物語は、ペドロ・パラモを中心に、その息子三人や妻といった関係者の人生を描いた小説であるが、何よりも驚いたのは、全ての登場人物がすでに死んでいるという点である。死んだ後に、ペドロ・パラモの息子の一人がペドロ・パラモを探しにコマラという町に行くところから物語が始まり、ペドロ・パラモが死ぬ場面で物語が終わる。そしてまた始めの場面に戻っていく、という構成になっている。
この小説を読んで注目した点が二点ある。
まず一つ目は、ペドロ・パラモが大地主になっていく場面である。大地主というと、現在の日本では大して権力者としてのイメージはないが、メキシコということもあり、こ...