平成19年度
土地改良学レポート
疏水百選から学ぶ農業用水と地域連携
―葛西用水の事例―
2007年12月13日提出
Ⅰ.はじめに
埼玉県北東部10市4町に跨る7900haに用水供給を行っている。また、埼玉県北東部の利根川及び江戸川の右岸に沿った中川流域の水田地帯で、羽生市から三郷市に至る55kmにも及ぶ帯状の地域で南下するほど都市化が著しい場所にこの葛西用水はある。
図1.葛西用水マップ
Ⅱ.葛西用水の概要
1.葛西用水の歴史
葛西用水は、徳川時代中期の享保4年(1719)に完成したもので、当時10ヶ領、300村の水田を潤し、領石高13万3千石に及ぶ大用水であった。
幕府が伊奈氏に命じて、利根川の東遷や荒川の西遷を実施し、直轄領地を中心にした河川乱入による不毛の地の水田開発を進める中で下流部の溜井(用排水調節池)の築造から始まり、順次上流に水源を求めたもので、用水の反覆利用を含めた合理的な水利システムで伊奈流(関東流)と呼ばれている。
以来、290年に及ぶ永きに亘り...