精神医学
精神医療の歴史および今後の精神医療
精神医学
1. 法制以前の歴史
わが国では中世以降のヨーロッパと異なって精神障害に対して宗教的な偏見は少なく、古くから精神病は病気であるという考えがあった。そのため、系統的な迫害は少なく、精神障害者の犯罪にも寛大なところがあったようである。たとえば、大宝律令(701)では、癲狂者(精神障害者)の罪には特別な取扱いをするように規定され癲狂というものを疾病とみなし法律的に保護してきた精神障害者処遇の歴史がある。しかし、精神障害者の収容施設が十分でなかったため、放置されたり、座敷牢や神社・寺院に収容され、加持祈祷や滝打ち、また迷信薬などの民間療法が行われ、なかには残酷な扱いを受けた者も少なくなかったようである。
精神障害者の収容施設は、古くから世界各地に作られている。代表的なものとしてスペイン・ヴァレンシア(1409) の狂人の家、ロンドンのベドラム(1247)、パリのシャラントン(1642) などがある。また、13世紀にはベルギーのゲールでは、信仰による治療を求めて教会に集まる多くの精神障害者を民家が里親制度のように世話をする家庭保護制度が実践...