【参考判例】昭和52年9月26日・昭和57年7月9日判決
一 本問において、Xが行ったことは大きく分けて2つある。1つは、「代金支払の意思がないにもかかわらず、飲食店Aで飲食した」こと。もう1つは、「支払いを免れるためにビール瓶でBの頭部を強打して…ケガを負わせ、そのすきに逃走した」ことである。以下、この2点について検討する。
二 まず、代金の支払の意思なく飲食店Aで飲食をし、代金の支払を免れたXに詐欺罪(246条1項)が成立しないかが問題となる。
この点、「人を欺いて財物を交付させた」といえるためには、?人を錯誤に陥らせる行為があり、?それによって相手方が現実に錯誤に陥り、?この錯誤に基づいて財物を処分する行為があり、?その処分行為により財物が交付されて移転する、という一連の因果的連鎖があって、これが故意で包括されていることが必要である。
本問の場合、飲食店Aでの飲食の注文は代金支払をその当然の前提としているから、Xが代金支払の意思がなく注文した行為は、Bを錯誤に陥らせる行為といえる。そして、Xの注文に基づいてBは飲食を提供したのであるから、Bは錯誤に陥り、飲食という財物を処分・交付したと解することができる。よってXの行為は、1項詐欺罪の客観的構成要件を充足する。
そして、代金支払の意思がないXには、上記の一連の行為を包括する詐欺罪の故意(38条1項)が認められ、同罪の主観的構成要件も充足する。
したがって、上記の行為だけに着目すれば、Xには詐欺罪(246条1項)が成立すると考えられる。
三 次に、Xは、飲食代金の支払を免れるために、Bを負傷させ逃走している。そこで、Xに強盗致傷罪(240条前段)が成立しないかが問題となる。
【参考判例】昭和52年9月26日・昭和57年7月9日判決
一 本問において、Xが行ったことは大きく分けて2つある。1つは、「代金支払の意思がないにもかかわらず、飲食店Aで飲食した」こと。もう1つは、「支払いを免れるためにビール瓶でBの頭部を強打して…ケガを負わせ、そのすきに逃走した」ことである。以下、この2点について検討する。
二 まず、代金の支払の意思なく飲食店Aで飲食をし、代金の支払を免れたXに詐欺罪(246条1項)が成立しないかが問題となる。
この点、「人を欺いて財物を交付させた」といえるためには、①人を錯誤に陥らせる行為があり、②それによって相手方が現実に錯誤に陥り、③この錯誤に基づいて財物を処分する行為があり、④その処分行為により財物が交付されて移転する、という一連の因果的連鎖があって、これが故意で包括されていることが必要である。
本問の場合、飲食店Aでの飲食の注文は代金支払をその当然の前提としているから、Xが代金支払の意思がなく注文した行為は、Bを錯誤に陥らせる行為といえる。そして、Xの注文に基づいてBは飲食を提供したのであるから、Bは錯誤に陥り、飲食という財物を処...