先住民の知的文化財産に関する考察

閲覧数1,530
ダウンロード数3
履歴確認

    • ページ数 : 11ページ
    • 会員1,100円 | 非会員1,320円

    資料紹介

    ?. 問題の所在
     世界中の生物資源と文化資源のほとんどは、発展途上国の特定民族あるいは一定の地域に集中している 。全世界に進んでいるグローバル化は、発展途上国の特定の民族あるいは一定の地域に巨大な利益と発展のチャンスを持ってくると同時に、その地域の環境や住民に不利益ももたらした。先進国の企業が第三世界の先住民や工業先進国内の先住民の知識や芸術作品を勝手に持ち出し、それを商業化して大きな利益を手にするようになったことに対して、先住民から自分達の知的財産を尊重せよという主張が唱えられるようになった 。発展途上国は、知的財産保護範囲を広げるよう先進国に対して主張している。しかし、先住民の伝承文化は既存の知的財産保護制度にはなじむだろうか。
     本稿では、まず「先住民の伝承文化」という問題の背景を整理し、先住民の伝承文化を既存の知的財産保護対象として位置づけることができるかどうか分析し、先住民の伝承文化を保護するための適切な方法とは何かを検討する。
    ?.問題の背景
     1.用語の定義
     「先住民の伝承文化」と言われるものには、遺伝資源、伝統的知識及びフォークロアという3つの種類がある 。
     「遺伝資源」とは、現実の又は潜在的な価値を有する遺伝素材(遺伝の機能的な単位を有する植物、動物、微生物その他に由来する素材)をいう(生物多様性条約(Convention on Biological Diversity(以下、CBD)第2条) 。CBDとは生物の多様性の保全を主要目的とする条約である。この条約は生物の多様性の保全、生物資源の持続可能な利用、遺伝資源の利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分という三つの目的を定めている 。
     「伝統的知識」とは、地域社会や原住民が永い年月をかけて獲得してきた知識であり、たとえば、薬用植物の活用方法、栽培方法、採取場所などに関連する知識である 。

    資料の原本内容 ( この資料を購入すると、テキストデータがみえます。 )

    2005/12/24
    TRIPSの枠組みの中での先住民の伝承文化の保護方法
    目次
    Ⅰ.問題の所在
    Ⅱ.問題の背景
    Ⅲ.検討
       1.TRIPSと先住民の伝承文化
       2.TRIPSの枠組みの中での先住民の伝承文化の保護方法
       3.具体的な保護方法
    Ⅳ.結論
    Ⅰ. 問題の所在
     世界中の生物資源と文化資源のほとんどは、発展途上国の特定民族あるいは一定の地域に集中している 。全世界に進んでいるグローバル化は、発展途上国の特定の民族あるいは一定の地域に巨大な利益と発展のチャンスを持ってくると同時に、その地域の環境や住民に不利益ももたらした。先進国の企業が第三世界の先住民や工業先進国内の先住民の知識や芸術作品を勝手に持ち出し、それを商業化して大きな利益を手にするようになったことに対して、先住民から自分達の知的財産を尊重せよという主張が唱えられるようになった 。発展途上国は、知的財産保護範囲を広げるよう先進国に対して主張している。しかし、先住民の伝承文化は既存の知的財産保護制度にはなじむだろうか。
     本稿では、まず「先住民の伝承文化」という問題の背景を整理し、先住民の伝承文化を既存の知的...

    コメント0件

    コメント追加

    コメントを書込むには会員登録するか、すでに会員の方はログインしてください。