権限のない代表取締役による会社代表行為
論点
会社法362条4項の意義
重要財産の処分とは
362条4項1号違反行為の効力
民法93条但書類推
代表取締役による代表権濫用
心裡留保説
代表権制限説
相対的無効説
絶対的無効説
一、債権譲渡の有効性
1.甲丙間における債権譲渡契約の成立の可否
AはBとの間で、甲社が乙社に対して有する過払金返還請求権を丙社に譲り渡す合意をした。Aは甲社の代表取締役、Bは丙社の代表取締役であり、代表取締役は包括的代表権を有する(会社法349条4項)ので、A及びBの行為の効果は各々甲社及び丙社に帰属することになり、この債権譲渡は両社間で有効に成立したこととなる。
2.会社法362条4項1条違反の可否
しかし、AはBとの合意に際して、甲社において取締役会決議を経ていないことから、この債権譲渡が362条4項1号違反にあたるのではないかが問題となる。
そもそも、362条4項が重要な業務執行につき取締役会決議を必要としている趣旨は、同項で挙げられている事項について代表取締役が権限を濫用すると会社の経営状態に影響を与えるおそれが高いため、代表取締役の代表権の濫用・誤用を...