吉田東伍 地方史研究・地名辞書の先駆者
吉田東伍を論じる」
「学歴のない博士」とされ、近代日本の歴史地理学の道を切り開いてきた吉田東伍博士。32歳から44歳までいかに彼が『大日本地名辞書』を執筆することに没頭し、彼のもつ内に秘めたエネルギーを一つの作品に捧げてきたことを授業で聞いたときに、博士の持つ直向きな個性に惹かれた。そして実際に図書館に行って彼のことを調べるにあたり、東伍博士の温かな個性がミニアルバムや講演から伝わってきた。「たった一日の図書館での調査で、10日や15日分は賄える」と言った彼は単に頭が良いだけではなかった。今回は東伍博士の備えていた人間的な魅力について、感じたことを述べていきたい。
創作活動というのは非常に膨大なエネルギーを要する。代表的な『大日本地名辞書』は1200万字、15尺もあったから、そこから彼はどれほど湧き立つ泉のような知的な体力を備えていたかを感じる。そんな東伍博士の三男、吉田冬蔵氏が語る父親の...