正当防衛
ドイツからの観光客で、空手3段のXは、新橋駅前で、酔っぱらいAとBのもみ合いを目撃し、Aが一方的にBに攻撃を加えているものと誤信し、これを止めようとしてAに近寄ったところ、Aは、Xが鬼のような形相でまっしぐらに自らのほうにどんどん近寄ってくるのを見て怖くなり、とっさに威嚇するつもりで、ボクシングのファイティングポーズをとった。Xは、Aが中年太りしたおよそ攻撃能力などなさそうなサラリーマン風の男性であることを認識しながらも、Aに殴られたら無傷ではいられないと考え、また、Bを助けるつもりで、いきなりAに回し蹴りをくらわせたところ、Aは酔っぱらっていたこともあってバランスを崩して転倒し、頭蓋骨骨折により死亡した。Xの罪責を論ぜよ。
まず、具体的に問題となる場面は、Aのとったファイティングポーズから、恐れをなしたXが回し蹴りをし、その衝撃でAを死亡させてしまった。この場合、Xに対し、傷害致死罪(205条)が成立するかというところである。
そこで本問の問題の所在であるが、XはAのファイティングポーズを見て、Aにはおよそ攻撃能力などなさそうに思えたのにも関わら...