Herman Melville 『白鯨』
「白鯨(モービー・ディック)」は未読だったが、名作中の名作と語り継がれていることは知っていた。読む前までは、エイハブ艦長と白鯨の戦いが克明に描かれたスケールの大きな復讐劇なのだと思っていたのだが、読み進むうちに想像と違っていることに気付き、この物語の真の意味でのスケールの大きさに圧倒された。
まず、「白鯨(モービー・ディック)」の構成なのだが、主人公はエイハブではなくて、外の世界を知りたくて捕鯨船に乗りこんだ船乗りだった。彼を語り手として、エイハブ艦長と白鯨の物語が語られるのかと思っていた。しかし、彼の目線から描写される対象は、鯨の特性や、捕鯨の仕組み、捕鯨船の構造や船上での生活などで、それも特定のストーリーの中で語られる訳ではなく、日常の描写の中で、説明的に語られていた。しばらく読んで、「白鯨」は捕鯨をあつかった博物誌のようなものだと感じた。物語というよりは、まるで百科事典を読んでいるような。実際に、本文の中で、著者は本書を「論文」を呼んでいる。百科事典を読んでいるつもりになると、なるほど、色々なことがわかる本だと思った。
時代設定でもある...