我々は、全人教育の基本的な考え方を理解するための教育観をどのような視点で展開していけばいいのか。人間を基本的にどのような存在としてとらえていくのか。それは人間観に基づいて展開していくものであると考えることから、その人間観とはどのようなものであるのかを交えながら、その教育観を述べていく。
玉川学園の創設者である小原國芳は、まず人間を「一個の大宇宙」又は「自己一身の実在的存在」とし、人間の貴さ、人格の崇高さ、自己の尊厳を捉えている。人間は単なる人でもなければまた単なる社会でもない。人間とは自信の内に公的社会性と同時に私的個人性を含んだ存在なのであるとし、人間は歴史的・社会的現実の中で生活し、社会のために生きる連帯的公人であると同時に、自分自身のために生活し、自己一身として生きる単独的私人であるとした。そんな自己の意義を真に発揮する事が、人の成長という現象だとし、また一人として自分と同じ人間のいない世の中で、いかに自己を万人に伝わるように表現できるかが、人の成長の度合いであるとしている。つまり、自己の力を発揮し、表現できるように導いていくことが教育であり、小原國芳が「教育は結局は自己開拓であ...