つまり、どんなものであれ、いろいろな人の手、世界の人々の手によって作られているということは誰しも理解できることだと思う。
そのものが、どんな人によってつくられたのか、ほとんど私たちは知らないでいるのではないか。今の便利で豊かな生活が、奴隷という状態で置かれた人々の上に成り立っているとするのであれば、果たして、それは本当に豊かな生活と言えるのだろうか。
奴隷制は啓蒙時代に公的に廃止され、今日の国際法では条約、慣習法ともにたとえ緊急事態であっても、いかなる例外もなく、禁止されている。奴隷制を公式に廃止した最後の国は、モーリタニアで、1983年のことである。しかし、新しい形態としての奴隷制は今日まで続いており、麻薬取引、強制売春、女性、こどもの人身売買、児童労働などとむしろ増えている。自由権規約第八条、欧州人権条約の第四条、米州人権条約の第六条、バンジュール憲章第五条において、奴隷制は、奴隷貿易、強制労働とともに禁止されている。
国連事務総長であるコフィアナン氏もまた、奴隷制度廃止国際デー(12月2日)において、奴隷制度はなくなっておらず、紛れもなく存在し、むしろ場所によっては広がりさえ見せていると述べている。 本稿では、現代における奴隷制について、まず、今問題となっている奴隷制とは何なのかを言及した上で、ブラジルに焦点を当て、国連の活動、メディアからのアプローチでブラジルの奴隷制における国際法上の課題を取り上げる。そして、その課題を解決するために、現在どのような取り組みが行われているのかを、国連、国家の動きを中心に、述べていく。また、その取り組みの中で企業、NGOといった機関、組織がどう取り組んでいくべきなのか。そして、いかに今後の国際社会が取り組んでいくべきなのかを検討、考察していくこととする。
卒業研究論文
ブラジルの現代奴隷制における国際法上の課題と解決策
目次
はじめに
第一章 ブラジルの奴隷制について
1.奴隷、奴隷制の定義 (奴隷条約や国際人権規約(自由権規約)などにもとづいて)
2.ブラジル奴隷制の現状 (国連公式文書、メディアの報道から)
第二章 ブラジルにおける奴隷制の国際法上の問題点、課題
1.『奴隷(奴隷制)』と強制労働の概念
2.人権条約の報告制度において
第三章 奴隷制の廃止に向けて
国際社会の取り組みについて
①ILO(国際労働機関)
②現代奴隷制作業部会
③ブラジル政府の動き
④国際NGO (Anti-Slavery International)の働き
終わりに
はじめに
まず、私がこのテーマで卒業論文を作成しようとしたと思ったきっかけから述べたい。私は、2回生の頃にサークル活動で、英語によるスピーチ活動において、そのスピーチでどのようなテーマでスピーチをしようかといろいろと試行錯誤をしていた。そんな折りに、本屋を歩き回っていたところ、ある雑誌に日本における奴隷について書かれていた。その事実をもっと知りたいと思ったので、インターネットなどを通じて、あ...