アンデルセンは近代デンマーク第一の文学者といわれる。デンマークは小さな時からラ・フォンテーヌの寓話や千夜一夜物語を読み聞かされ、デンマーク農民の間に伝わる昔話を聞かされ育ったことから後年すぐれた童話作家たらしめた要因になった。創作童話というジャンルを確立したのは十九世紀に入ってから間もなくアンデルセンが出版した処女童話集である「子どものための童話集」の第一集がその誕生を告げるものとみている。この童話集にはそれまでの伝承童話では見ることの出来なかった人間尊重の意志、万物に対する平等の思想、小さきもの弱きものに同情と哀燐とをかける博愛主義的思想及びファンタジーとが自由に飛翔している。アンデルセンが...