「人間の条件」を読んで
人を人たらしめる要因、「人間の条件」とは一体何であろうか。動物学的に考えれば生命としてこの世に存在した瞬間からヒトである、といえる。しかし社会的な観点から観ると、年を重ね成長していくことにより常識や通念などを身につけていき、「社会に通用する」人間となっていくのである。しかし本書では、「人間の条件」を「私たちが行なっていること」というテーマから全ての人間存在の範囲内にあるいくつかの活動力を分析している。そして私たちの最も新しい経験と最も現代的な不安を背景にして、人間の条件を再検討している。
本書では条件づけられた人間が環境に働きかける内発的な能力、すなわち「人間の条件」の最も基本的要素となる「活動力」を、「労働」、「仕事」、そして「活動」の三側面から考察している。労働と仕事は現代人にとってほとんど同義語であるが、しかし労働が生み出す生産物は耐久性の無い消費物であり、仕事が生み出す生産物は人間の消費過程を越え、それにいわば抵抗して存続するように作られた物であるという点に注目すれば、その差は明らかである。そして活動とは、生産物は演技(アクション)そのものであるともい...