『中村屋のボース』を読んで
世界一の乗客数を誇るターミナル、新宿駅。そこにいる人々は、日本人だけではなく、白人や黒人など、様々な人種の人々に溢れかえっている。中でも朝鮮・中国をはじめとするアジア系の人々の多さには圧巻である。街中を歩くビジネスマンや韓国客から、コンビニやファーストフードの店員まで、たくさんの「アジア人」が新宿で生活している。新宿では、日本人と外国人がともに働いたり、遊んでいる光景がごくごく日常的に見られる。しかし同時に、外国人による犯罪の多発や、逆に外国人への就労差別などもまた多い。国際化ゆえに起こる、新たな問題も垣間見ることができるのだ。新宿を歩き回ることによって、どんなテレビ番組や書籍を読むよりも、私たちは日本国民として生活しているとともに、アジア人、地球人として行動しているのだと肌で感じることができる。
本書は、その新宿が、まだ東京の外れの小さな町で、現代のような国際的なイメージとはまるで無縁だった時代に遡る。主人公の名前は「ラース・ビバーリー・ボース」(1886-1945)。日本人の間で根強い人気を保っている「中村屋のインドカリー」を伝えた人物である。しかし彼は...